Edge in Cafe
会期:2004/11/12(金)
主催:Art Square/UPLINK FACTORY
協力:テレコムスタッフ
【Edge番組情報】
毎週土曜日(深夜0:00〜0:30)*放送時間は予告無く変更されることがございます。
スカイパーフェクTV、ベターライフチャンネル(216CH)で放映中。
Director:石田瑞穂
Edge in Cafeの第三弾は、そのユニークな眼識で注目を浴びている古本蝟集家で新感覚派の古本ライター/エッセイスト・岡崎武志氏を招き、2002年2月に絶賛放映されたSKY PerfecTV!の番組「Edge 2〜今を、いきる」から、「岡崎武志 〜ひとは、古本で作られる」(2002年/30分/ドキュメンタリー/制作・テレコムスタッフ)を上映。
さらに、国際的に活躍する若手女性映像作家、狩野志歩氏による書物を巡る作品を上映、そして昨年、詩集『点火期』を上梓して詩界にデビューした杉本真維子氏による詩の朗読、等を開催する。トークには、卓抜な翻訳家としても知られ、アイルランド文学の研究紹介を起点にオルタナティブな書物・言語文化の在り方を提起している文学者、栩木伸明氏も登場。
1、Edgeについて
スカイパーフェクTV、ベターライフチャンネル(216CH)で、2001年5月からスタートした時の詩人と映画作家を映し出すアート番組「Edge」。多様化する価値観のなかで若者のアイデンティティーが揺れ動き、生きることの意味が見出しにくい時代。番組では、こうした時代の危機にどう対応するのかを、映像と言葉の表現活動の最先端を行く映像作家と詩人たちの姿のなかに探り「自分とは何か」「どのように生きるか」を芸術を通して問いかける。
2、「Edge in Cafe」とは
Edge総合プロデューサー、詩人・城戸朱理の立案により始動したポエトリー・イベント「Edge」のサブジャンル的なイベント。ストリート性を重視し、文学のみならず、ファイン・アート、サブカルチャー、デザイン、哲学やソーシャル・アクティヴィティーなど、さまざまなジャンルと人が交差する、サブジャンル・イベントの性質を活かしたイベントを提起し、既存の文化とその流通をゆるやかに変更しながら、現代における詩的創造を広範に問いかける。各イベント・地域ごとにそれぞれ独立したディレクターを擁し、インディペンデントなポエトリー・イベントの企画・制作を一任、支援しているのが特徴。また若手のアーティストを積極的に登用しながら世代間の交通を促してもいる。キーコンセプトは、「ストリートに舞い降りる詩の翼」。
石田瑞穂氏の連載シリーズ第三弾アップしました!
石田瑞穂のふるほんな一日(三) 〜京都純古書店物語1〜 仕事で京都に行った。錦で三木鶏卵の玉子焼をつまみに、これぞ京の大吟醸という、超濃厚、ずしりと重い甘口の酒を立ち呑みして、浄土寺の西洋骨董店イリスで二百枚はあるオランダ・デフルト・タイルに目を点にしていたら、先輩ライターが一声、「そうだ、古本屋に行こう。」 旅先や出張では、僕も『全国古本屋地図』を片手に廻るクチだが、やはり、京都の古本屋というのは特別ではないか。 何より、京都の古本屋は喫茶店に喩えるなら「純喫茶」。店主の気韻が店の隅々にまで充ちて、品格が高い。こだわりの店が多いのだ。近年は東京の神保町や早稲田でも一冊々々が店主のこだわりと目識を感じさせる、いわばセレクトショップ的な活躍が華やかだが、原因は京風、とも言えないだろうか。 先輩が案内してくれたのが三条御幸町の「アスタルテ書房」。日本の幻想文学、シュルリアリスムを蒐めて名高い。古ビルの二階とは思えない、どこか耽美派作家の書斎を思わせる造りだが、古色を帯びた古本棚や硝子ケースには、澁澤龍彦、種村季弘、生田耕作の稀購本がならぶ。また、金子國義の絵やリト、四谷シモンの人形が立ち、十六世紀の英国黒魔術書が開陳されている。目をひいたのは、生田耕作の蔵書の一部を買とった、生田耕作コーナーだろうか。生田の訳書には、その表紙やカット絵に暫々金子の絵画作品が使われていて、両者の一種の<コラボレーション>は知る人ぞ知るが、それが、立体となって古書店そのものを装幀しているのが、面白い。その店内の空間は、フラヌール(フランス語でいう「高等遊民」)の部屋の具現といったところか。僕は店内の雰囲気で満足したが、ちなみに先輩は、速見史郎の須磨寺良寛像落成記念オブジェ、一九九八年キース・へリングFREE SOUTH バッジをゲット。僕も結局ハンス・ベルメール、オリジナル・ポスターの前で逡巡した。(この稿、次回につづく)
石田瑞穂のふるほんな一日(二)
〜on Sundaysの高橋昭八郎〜いま、青山外苑通りにあるワタリウム美術館B1F、ギャラリー&ブックス「on Sundays」では、「翼ある詩〜高橋昭八郎展」が開催されている。高橋昭八郎は、不幸なことに、日本の文学界ではその名がほとんど知られていないヴィジュアル・ポエトリー(「視覚詩」とも呼ばれる)の巨星。今年の七月、高輪の古書店でもある啓裕堂ギャラリーで、日本ではじつに約半世紀ぶりの個展が催された。今回、私は幸運にもワタリウム美術館での個展で、コーディネーターの役を務めさせていただいた。高橋昭八郎の個展が二度に渡って開催された今年は、日本の詩史にとっても記念すべき年となるだろう。
ヴィジュアル・ポエムの定義は、世界中の民族の星座の名付け方と、同じぐらいあると思う。でも、極論を言ってしまえば、それは言葉を使わない、言葉を超えていこうとする詩で、日本のヴィジュアル・ポエムの嚆矢を放った詩人、北園克衛は、自らが制作したオブジェを撮影し、その文字をいっさい使用しない写真を「詩」として提示した。その詩は同じく視覚芸術としての現代アート、さらにはデザインへも架橋されていく。日本の文壇ではナイーヴな前衛詩としてしか看做されなかったふしもあって、高橋氏も、日本よりは海外で認知されていて、評価も高い。
去る10月22日、記念イベントと個展は無事スタート。オープンの前々日、10月20日はスタッフと関係者が集合して、高橋氏の監督の下、展示のセッティングが行われた。その日は折しも台風23号が都下を直撃した夜。作業は深夜に及んだ。とはいえ、勝手知ったる展示準備、などというわけにはいかなくて、せわしく立ち働いているワタリウム側の若いスタッフに紛れて、関係者(詩人二名を含む)はあっちをウロウロこっちをウロウロ。コンパクトな猫より邪魔だし、役に立たない。見兼ねたワタリウムの和多利恵津子氏が「資料のディスプレイでもしててください」と、一声。潔くそちらに回った。
ところが! 高橋氏が唐津から送った段ボール箱から、でてくる、飛びだす、宝の山が! まずは、北園克衛が主催し、高橋昭八郎が詩人としての出発を遂げ、若き白石かずこがいた伝説の日本初の国際的ポエトリー・マガジン「VOU」(「ブー」とも「バウ」とも読める)が、高橋氏が参加した「NO.55」(1957年)から終刊号の「NO.160」(1978年)までコンプリートされている。たしかに「VOU」は今も古本屋で高額で売っているけれど、そのほとんどが主要メンバー不在の時期のものだから、こうして初期のものを含めて通覧できる機会はほとんどないだろう。終刊号「NO.160」は後記が空欄になっている。それは北園の死によって終刊した「VOU」の美しい鎮魂でもあったわけだが、他の人が書いた文章では知る機会があったものの、こうして実際に目にするのは初めて。すると、今度は、その北園克衛が出版した日本で初めての「プラスティック・ポエム」(視覚詩の一発展的試行)の詩集『moonlight in a bag』が! そもそもヴィジュアル・ポエムの詩集は一冊一冊がアーティスツ・ブックに近い出来栄で、よって部数もごく限られたものになる。言わずもながら、すべて初版。もちろん『moonlight in a bag』は初めて手にした。さすが、というか、これだけ「ヴィジュアル」が氾濫している現代においても、この詩集全篇におよんでいる北園の、鋭角的で明徹なフォルムが鳴り響かせる詩的戦慄には一点の曇りもない。表紙の淑女も、制作当初から変わらぬと見えて、麗しい。北園の永遠に斬新な美女を眺めていると、世の中の何が新しくなったのか、分からなくなるから不思議だ。だが、こうした幼い感興も、この詩集の実物に接して初めて沸き起こるものだろう。これが他の書物への転載写真だったりしたら、その魅力は完全に削がれてしまうに違いない。またそれが視覚詩の悲劇的な特性でもあるのだけれど。つづいては、同じく北園克衛『煙の直線』。こちらは北園の直筆署名入り。北園の署名入り詩集は、じつは意外に少ないと言える。あってもたいがい送り状が付されたかたちなので、そこら辺も北園という詩人を伺わせて奥ゆかしい。それから、こちらも凄い。日本で初めての「コンクリート・ポエム」詩集、新國誠一の『〇音』。そして、同じく、純白箔押しの装幀が眩しい『詩集』。古本屋でもほとんどお目にかかれない、心ある詩の愛好家には垂涎、憧憬の一冊だろう。村上昭夫『動物哀歌』など、その数は書ききれないほど。ちょっと海外の出版物にも触れておこう。エイコン・グラフィクス社刊大判クロース装の『Toute Seconde est Une Premiere』は、高橋昭八郎、カールフリードリッヒ・クラウスら七名のヴィジュアル・アーティストによる五十部限定の豪華本。すべての作品がオリジナルのアーティスツ・ブックで、いったい幾らすることやら(笑)。こちらも枚挙に暇ないが、他に、1971年、スタットガルトでの高橋昭八郎個展のポスター、デヴィッド・メイヤーが送り主の「Flux SHOE」からの手紙など多数。ヴィジュアル・ポエットリーの歴史を体現した詩人の個人資料なのだから当たり前かもしれないけれど、私はもう「ここは夢にまで見た夢の古本屋だろうか?」状態(笑)。すると、荷解きをしていた高橋氏が「あれ、懐かしいな」と、黄ばんだ、やや鋭角的な文字が書かれた一枚の紙片を発見した。なんと、北園克衛が高橋さんに宛てた、直筆のメッセージカードなのでした。
ところで、ヴィジュアル・ポエトリーの来し方を語る貴重な資料もさることながら、「本」の楽しみということであれば、何よりも高橋昭八郎その人のヴィジュアル・ポエムを語らずにはいられない。1960年代末から70年代初頭にかけて、高橋氏は、「書物」にまつわる重要な視覚詩作品を発表している。それらは「ポエムアニメーション」と名付けられた、『鳥・風・影』、『水の国・火の国』、『あ・いの国』のシリーズ。それぞれが、どことなく「本」の形をしていて、すべて手作り、二百部程度の限定出版。その理由は、ひとつひとつの作品が複雑な開閉箇所を入れ子細工のように秘めている、精巧なパズルにも似たペーパー・クラフトだからで、作者でさえ、いったん全部を広げてしまうと、もうほとんど元に戻すことができない。いわば「閉じることも、開くことも拒絶する」というこの視覚詩の姿は、まさに言葉を留めるものとしての「本」の理念とその謎の極北を生きていると言えるだろう。
私はなにも役得を自慢しているのではない。確かに、私の同世代を見渡せば希有な体験ではあるけれど、私は、たとえば高橋昭八郎のポエムアニメーションが、古本屋で伝説の本とか言われているところを想像してみたいのだ。実際、ポエムアニメーションの噂を聞きつけた私は神保町などを回り、行つけの古本屋に尋ねたりもしたけれど、誰も知らず、逆に、「そんな面白い本があるならぜひ見てみたい」と店主に請われる始末。そして、そんなシチュエーションが限りなく似合ってしまうのも、謎と驚きにみちた美事な詩書、視覚詩の楽しさでもある。こんな古本が古書店街に秘かに出回っていたりしたら、古本屋を巡る愉しみもぐっと増すのではないか。
けれど、どんなに語られることがあっても、実物を目にすることができないなら、いけずというもの。ところがヴィジュアル・ポエトリーそのものとは言わないまでも、その優れた仕事を今に伝えているものが、じつは、私たちのごくごく周辺にある。煙草の自動販売機を見ていただきたい。その中の「ハイライト」という煙草、もと「VOU」のメンバーだったヴィジュアル・ポエット、宇留河泰呂がデザインを手掛けたものなのだ。北園のハヤカワ・ミステリ文庫の装幀も有名だが、多くのヴィジュアル・ポエットが、日本のデザインの黎明期に活躍している。誰からも見えず、周囲に理解されているとは決して言えない詩人としての労働を負いつづけた人たち。その一方で、詩が彼らにもたらしたものは、私たちがそうとは気付かずに愛している日常のさまざまな物に、今でも、宿っている。
石田瑞穂のふるほんな一日(一)
「古本」を通じてこれからのオルタナティブな書字文化を考えようとするイベント、「Edge in Caf?@UPLINK FACTORY〜古本虫のナイトキャップ」が、来る11月12日、遂に開催されます。とはいえ、このイベント、ブンガクのムズカシイミライをお話ししようという催しではまったくなくて、ホンの虫や重度の活字中毒者とかが集まって、たまには遊ぼうというサロン形式のイベントです。古本市にいりびたるコアな愛書家から、思潮社刊オレンジの表紙の『ビート読本』なんかを持ち歩いている下北系まで、ぜひ、おこし下さい。
ゲストは、いま、古本蒐集家のニューウェーブとして注目されているライターの岡崎武志さん。氏が二年前に出演したスカイパーフェクTVのアートチャンネル『Edge2〜今を、いきる』の番組、「ひとは古本で作られる」を観ながら、古本が照らす現代やそこに生きる人間の姿を考えたり、古本の選び方、楽しみ方なんかも聴いたりします。
そんなわけで、先日、渋谷UPLINK FACTORYのイベント・ディレクター・鎌田英嗣氏とともに、国立市の岡崎武志邸に遊びに行ってきました。
駅からタクシーに乗り、閑静な住宅地にある一戸建てのお宅に着くと、奥様とお嬢様がお出迎えしてくださって、岡崎さんは地下の書斎にいらっしゃるとの由。え、地下室の書斎? 詩人ですと、消防署を改築してギャラリーのような家に住んでみたり、廃工場に住み始めたりする人もいるものですから、些か期待してしまいました。でも、そこは岡崎さん、さすがに常識人(笑)。終始にこやかな、ジャージ姿の岡崎さんが我々を迎えてくださった書斎には、もちろんワインセラーがあるわけではないのでした。
案内していただいた岡崎さんの書斎をぐるっと見渡すと、わりと小さめのデスクにマックがのっかり、周辺には雑多な本が積まれ、執筆が深夜臨戦体制におよんだ時のベットや来客(主に編集者でしょうが)用のソファが置いてあります。ラジカセからはBGMの、ビル・エヴァンスのジャズ・ピアノ。けれども、さすがに本は多い! 執筆で使われているスペースの後方には、壁一面に、本。床にも、書架。面白いのは、本箱の背板を抜いて文庫を表裏両側から収納できるように工夫されていたこと。「いったい、何冊ぐらいあるんですか?」「二万冊ぐらいかなあ」。ちなみに小規模の図書館の蔵書数が四万冊程度。二万冊は、神田の古本屋さんの約1・5件分に相当します。たぶん、我々が見せていただいたのは、蔵書のごく一部に過ぎないのでしょう。でも、ちょっと不思議なかんじです。岡崎さんは著述業のなかでも古本蒐集家にしてライターですから、ディスプレイされた稀覯本だとか、もっと本にうずもれたブックイッシュな書斎を想像していました。ですが、これだけの蔵書数に囲まれながらも本の威圧をほとんど感じません。むしろお部屋のしつらえはじつに自然体で、居心地のいい空間。以前、浅草在住の、私が日頃お世話になっている某老書評家がブック・ドラフト(愛書家たちがもっとも恐れている本の雪崩現象)で骨折したことがあって、物書きと本というとどうしてもそんな硬派な関係に陥りがちですが、岡崎さんと本からは、もっと柔らかな関係性が醸し出されているのです。
それは岡崎さんの、本を選ばれるときの眼、付合い方のセンスと深いかかわりがあると思います。たとえば周知のように、文庫本の緻密な比較をしたりする一方、岡崎さんが好んで集められている明治や大正、昭和初期の本などは、有名な著者のものや稀覯本の類ではなく、そのほとんどがいわば「均一棚」などから掘り出された雑本。岡崎さんは明治、大正期の「家庭の医学」や「洋犬の飼い方」、「ひらがなだけで書かれた論理学の本」などを掘り出されたことをじつに嬉しそうに話されます。先日お宅にお伺いした時は、昭和初期の広告デザイナーが旅誌としても活用していたらしい、日本や外国の観光地のパンフや切符を集めたスクラップブックを見せていただきました。
「均一小僧」と自ら名乗っている岡崎さん。御著書のなかでも書かれていることですが、岡崎さんはそうした時代の流通から取り残され、古本屋の書架に埋もれている本たちを、子供のころに牛乳瓶の蓋や古切手を集めていたような感覚で拾われていくのだといいます。ただ、面白いことに、ジャンルは違っても、そうして旧来のマニアとは一線を画し、自分だけの眼と感覚で何かを集めることにハマる「変なコレクター」たちが、岡崎さんの世代には多いのだそう。たとえば、みうらじゅん氏や坪内祐三氏のような人たちが、岡崎さんの世代には「地層のように広がっている」のだそうです。ハイスピードな現代のなかで失われてしまった「懐かしさ」を今の自分なりの感覚で上手に咀嚼し、発見していく才覚。岡崎さんの世代の地層のリストに、私なら、骨董界の「新感覚派」、坂田和實氏を付け加えることでしょう。
でも、そんな岡崎さんの古本にたいする目線や感覚はどうして生まれてきたのか。それはイベントで、みなさん御自身で、岡崎さんに聞いていただきたいと思います。
そんなこんなで歓談の時はあっというまに過ぎ去り、帰りは岡崎さんが車で駅まで送ってくださいました。車中で、以前、岡崎さんの書かれた洲之内徹論の話をすると、「ぼく、彼の大ファンなんだよね」とのお答え。ちょっとだけ、岡崎さんの本えらびの秘密とすれちがった、岡崎邸訪問でした。
石田瑞穂のふるほんな一日 〜「古本虫のナイトキャップ」開催!レポート去る11月12日よる、遂に「Edge in Cafe vol.3 @ UPLINK FACTORY〜古本虫のナイトキャップ」が開催、観客、出演者、双方の熱気に包まれながら深夜十一時過ぎ、無事、閉幕した。
御来場の観客のみなさん、出演者ならびにUPLINKFACTORY のスタッフのみなさん、ありがとうございました!そして、お疲れ様でした!
当日は、夕方6時30分に開場。古本と詩そして映画という、UPLINK FACTORYでも初めての試みということもあって、客入りが心配されたものの、開演直前の七時前には客席はほぼ満員の状態。若い人が多い!岡崎さん、栩木伸明さんらとホッと胸を撫で下ろしていると、開場は暗転して間もなくテレコムスタッフ製作『岡崎武志〜ひとは、古本でつくられる』が上映された。観客は喰い入るように映像を観ている。「Edge2」で製作されたこのアート番組が収録されたのが、およそ二年前。実は、以前、岡崎さんはあるエッセイのなかで、テレコムスタッフが製作している超長寿テレビ番組、「世界の車窓から」の古本屋版を作っては、と提案されたことがある。それが「岡崎篇」という形で半場ば実現してしまったのだから、合縁奇縁というもの。昨年、急逝された、川越の古書店、坂井ぎやまん堂の御主人との、実にゆったりとした時間を湛えた、店内の素晴らしいショットが後半を飾って、番組上映の方は終了。つづいては、岡崎さん本人がスクリーンの前に登場されて、ちくま文庫『古本極
楽ガイド』から数篇を朗読された。幼い頃、お父さまを亡くされ、古本の肌ざわりや、文章に父の姿を探されたという岡崎さん。その声による朗読が胸を衝く。やや緊張した面持で朗読を了えられた岡崎さんに、会場から温かい拍手が湧き起こった。朗読の後は、映像作家・狩野志歩、詩人・杉本真維子の両氏によるクロス・リーディング。狩野志歩氏は傑作『映画に関する小さな本』をひっさげて登場。薄明のなかで一冊の本のページが一枚々々ゆっくりと、なんとも言えない幽かな気配で捲れていくショート・フィルム。柔らかな光のなかで一瞬浮かびあがる紙の輪郭。そして、掠れた音を立てて再び闇のなかへ戻っていく運行を綴じた書物という存在は、確かに映画と囁きあっているのだろう。その発見と共に本と映画の囁きをフィルムへと定着させた、稀に見る作品だった。狩野氏のあまりに“幽か”な映画のなかの本へと旅していくのは、杉本真維子氏の朗読。昨年上梓された第一詩集『点火期』を、杉本氏はあえてアンプラグドで読んだ。それは、マイクという、声と本とを媒介するものを拒んで、声を空間のなかで火玉のように弾ませていくリ−ディングであった。三人のあいだで本がぼうっと発火していった。
パフォーマンスの後は休憩を挟んでトーク。司会は私。岡崎さん、狩野さん、杉本さんに加え、ゲストの栩木伸明氏を招き、話が進んでいく。今回、トークの後半は、出演者の各氏に自ら「均一小僧見倣い」になって貰い、会場にお持ち戴いた均一本を岡崎さんに採点して戴いた。栩木さんはこの日のために故々京都に遠征。見事、木版刷り明治初期日本史書を二百円にてゲット。幕末〜明治の転換期の庶民の心像にしばし思いを馳せた。杉本さんは「本が読めなくなった時、この本を読む」と言う、三木清の『人生論ノート』を持参。「本を読む人の姿に瞳れるようにしてこの本を読みます」というコメントは、言葉少なだが、現代の若者の切実な本の向き合い方がみえて、会場を肯かせていた。狩野さんも、先程の上映で使われていた『映画俳優論』(プドフキン著/馬上義太郎 訳 てすぴす叢書)を披露。そして真打、岡崎武志の均一棚セレクトは、やっぱり驚くべき珍本奇本の数々。軟派小説『童貞機関車』、『夫のくせ』、『作家兄妹』(笑)。この世にこんなあり得ないタイトルと内容でそそる本があったなんて。しかも均一棚に……。さすが「均一小僧」、見事なお手並みでした!最後は岡崎書店くじ引き・大蔵書プレゼント大会といった嬉しいハプニングもあって、会場は興奮に沸き返った。
トーク終了後は観客、出演者による交流会。面白かったのは、この日、多くの若手古書店主が会場に足を運んで下さった。岡崎さんに熱心に色々と質問していた姿が印象的だった。そして、何と、私も十年来通い続けている神保町の珈琲店「ぶらじる」のマスターも、偶然、お立ち寄り下さった。アフター・イベントにも沢山の観客の方々が遅くまで残って下さり、展示してあったアトリエ空中線、リムアートの本棚を熱心に見たり、ビールやワイン片手に歓談の夜を過ごしたのでした。
今回のEdge in Cafe、「古本虫のナイトキャップ」は古本と現代の架橋する、客層もガラリと違う有意義で楽しいイベントだった。来年は、「コンビニの謎」、「骨董、天国と地獄」、「詩と酒のひそかな関係」など、とんでもポエトリー!イベントを続々と企画が進行中ですので、嘘か誠か、実現するのを御期待下さい(笑)。
十二月五日(日)には六本木ヒルズ内「ハートランド」にて、白石かずこ氏をはじめ、現代詩人たちのポエトリー・リーディング「都市を装幀する」がスタート。こちらは本当(笑)。次回も、ぜひ御来場を!楽しくも刺激にみちた一夜の後日、私は神保町を歩いてみた。やっぱり、いいですね。そのほとんど全ての物が、本を中心に作られている街、神保町。本を買った後、一人で憩うことのできる馥郁たる珈琲店がそこここにあり、安くて美味しい食べ物屋さんや、書談に花を咲かせるための呑み屋さんも充実している。最近はサロン的なこだわりの書店や、ちょっと洒落たトラットリアも増えた。西脇順三郎の詩じゃないけれど、神保町にはここは天国かと思う空気が漂っている。本当の意味での文化と言うのだろう。この街のような、本と人のための場所がいつまでもこの地上に在り続けることを、切実に、願う。
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コメント
アップリンク・ファクトリーでの開催はもちろん初めての「Edge in Cafe』。どんな内容になるのか我々スタッフも当日を楽しみにしております。皆様是非ご来場下さいませ。
また、皆様のコメントも随時受け付けております。
Posted by: アップリンク・ファクトリー : October 21, 2004 06:14 PM
石田瑞穂さんからコメント頂きました!
Posted by: アップリンク・ファクトリー : October 31, 2004 05:53 PM