1995年10月にオープンした
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整理券配布について
各会場、イベント・上映開始1時間前から整理券を配布しております。『ザ・コーポレーション』に限り、上映開始の30分前より整理券を配布致します。
田村隆一in Memorium
- 日時:11/5(土)
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出演 吉増剛造(詩人) 城戸朱理(詩人) 田野倉康一(詩人)
和合亮一(詩人) 山内功一郎(静岡大学助教授・アメリカ現代詩・比較詩学)
石田瑞穂(詩人/司会)

戦後日本社会を「荒地」と呼びつづけた巨大で無頼な詩人、田村隆一。その詩人の生前の姿を収めた貴重な未公開映像が、発掘された。
SKYPerfecTV!で絶賛放映中の詩とアートの番組「Edge」(216ch)は、この映像をもとに番組を制作。放映後は、大きな反響を呼んで、再放送におよんだ。そして、今秋、渋谷UPLINK FACTORYで、ポエトリー・イベント『田村隆一in Memorium』を開催! 田村隆一に実際に知遇をえた詩人、吉増剛造が田村に捧げるオリジナル詩篇の朗読をはじめ、「戦後詩を滅ぼした詩人」城戸朱理、そして、田野倉康一、和合亮一、石田瑞穂などの、詩でここ=今のフロントラインに立つ若手詩人が結集する。また、シンポジウムには、気鋭のアメリカ現代詩研究家、翻訳家の山内功一郎も出演。若い世代が、現代の虚空に虹のようにゆらめきだつ、田村隆一の「垂直的人間」と「垂直的詩行」の世界に分け入る。
同時開催として、ギャラリーにおいて「Tamura Ryuichi in Memorium」展を開催。
Edge “Special”「田村隆一in Memorium」

主催 UPLINK FACTORY、Art Square
後援 株式会社 思潮社
協力 テレコムスタッフ

連載3
テキスト
石田瑞穂
世界がまだ若かった時の眺め
「眺める」という行為は「肉眼」の詩人田村隆一に至極似合う行為だった気がする。ただテキストとして読むだけではピンとこなかった「まっ赤に燃えながら/伊豆半島の天城にむかって落下する/秋のおわりの夕陽が肉眼で見たかったら/鎌倉の由比が浜に出てみるがいい/中略/その世界を眺めたら/どんな人だって天動説を信じるだろう」(「牡蠣」)という名高い詩行のイメージが、家族の方のお話を聞いたり、実際、詩人のいたホームランド、鎌倉に通い、佇んだりすると、スッと、肉体的に感じられる瞬間がある。
江ノ島電鉄稲村ヶ崎から海への道を歩いて数分のところに、Rというイタリアン・レストランがある。田村さんは、Rの、相模湾が眼前に広々と見渡せるテラスから見える海がお好きだったという。二日酔いが何日もつづき、食事のできない日がつづくと、悦子夫人と美佐子さんは、このRへと田村さんを車で連れてきた。
二日酔いがひどい時でも、田村さんは、ここの唐辛子とニンニクのスパゲッティーと、娼婦風のスパゲッティーだけは食べることができた。普段、体調の良い時は、田村さんも上機嫌で、そこから見える海を眺めながら赤ワインやビールのグラスを上げつづけて、終いには、せっかく頼んだスパゲッティーはパリパリに乾いてしまい、手もつけられずに下げられてしまうことも少なくなかったのだとか。海を眺め、夕日や女性を眺め、土地や季節の花の香をサカナにグラスを傾ける。田村さんの随筆を読んでいると、そんな時間が汐のようにくり返されている。今はない江ノ島の屋台集落も、お気に入りの展望台。
海軍時代の軍歌を歌うのが大好きだった田村隆一。そんな若かりし頃の田村さんと海軍時代を、三好豊一郎は「聖なる関係」と証言している。田村隆一は反戦主義者だったが、彼の海軍時代の足跡をたどってみるといい。土浦、桜島を見晴るかす鹿児島航空隊、近江八景唐崎の松が「目と鼻の先」にあった滋賀海軍航空隊予科練、どの地もすばらしく風光明媚な場所だ。田村さんの「風と光と二十歳の私」がそこにはあったのだろうか。
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連載2
テキスト
石田瑞穂
居酒屋と銭湯
田村隆一といえば、居酒屋と銭湯。「大切なことはすべて酒場から学んだ」(田村隆一晩年のエッセイのタイトル。今年、思潮社「詩の森文庫」より『自伝からはじまる70章 大切なことはすべて酒場から学んだ』として刊行されている)という、酒呑みには恐ろしい思想を語った酒精でもあった。戦後、都下に住み、早川書房の編集者時代、田村さんは、下宿から銭湯に行き、それから居酒屋に座ってお銚子一本、貸本屋で本を借りて帰宅という楽しい下宿ライフを築いている。そのスタイルは、鎌倉でも継続されていたようだ。「僕はもう、酒以外の物にお金を払いたくない」と、悦子夫人に洩らしていたみたいだが。
田村さんが通った居酒屋については、とても、ここに書ける紙幅はない。ご実家だった鶏料亭「鈴む良」(田村さんの盟友、三好豊一郎が美しいメモワールを随筆に書いている)があった大塚の「江戸一」は、田村さんが「半世紀通った店」。東京一と呼んで、何度もエッセイに書いている。田村さんが好んだのは、なんといっても、褒紋正宗。そして、皿だし湯豆腐よりややじんわりぬる燗にしてある江戸一特有の白鷹。ちなみに、「居酒屋の作家」内田百聞が初めて日本酒の味を覚えたのは、戦前の銀座にあった六文で、これも白鷹の燗酒。どちらもかなり時間をかけてつけるにもかかわらず、微妙なぬる燗を饗する。95年の『東京人』(No.99)には、江戸一女将、中野フクさんが褒紋正宗を携えて、晩年の「ミスタ・タムラ」をおとずれる軽妙な酒仙対談があるので、古本屋などで見つけられたし。
鎌倉には、田村さんが通ったと思しき店がいくつもあるが、代表的なのは、小町から若宮大路よりに少し入ったところにある、鎌倉人知る店CとYが軒を列ねる一郭。
田村さん好みの居酒屋は、一歩引いたところでも山手人にない人情味があり、円熟した人生観を持ち、それでいて上質な居酒屋。それを生むには、客層はもとより、酒と肴に腕がなくてはならない。相模の地蛸、鎌倉海老、鯖寿司、鯛の昆布〆、葉山の地野菜と茸。どれも鎌倉の店なら食せるものだが、この二店からすると、格が落ちる。小林秀雄や永井龍雄も通った店だが、ほかに小町通りの知る人ぞ知るNがある。小林はここのお弁当をよくお昼にとっていたそうだ。あと、忘れてならないのは、やはり、その付近にある伝説的なバー、M。かなり濃いめの、それでいてベルモットの香は残した昔気質の横須賀ふうカクテルは素晴らしいの一言だし、舌にとろけるターターステーキ、自家製ローストビーフは絶品。ここも、田村さんのお気に入りだった。が、田村さんは、カウンターに座っても、杯を上げつづけるだけで、ほとんど食事は採らなかったらしい。それは寿司屋でもそうで、お好きだった貝類をちょっとつまんだ後は、何も食べなかったという。それでも「行つけの寿司屋」。
居酒屋について書けばキリがない。さて、冒頭にも述べたとおり、田村さんは銭湯も好んだ。僕自身、田村さんが銭湯協会の注文で書いた、銭湯十訓の暖簾を見た記憶がある。田村さんが、妙本寺や材木座からの散歩途中で立ち寄った鎌倉最古の銭湯Tがある。
お湯はくすり湯で、なかに実に素晴らしい富士のペンキ絵がある。また、田村さんは材木座の借家時代、銭湯の向いの風格ある「明治創業の酒屋」で新聞を広げ「朝食」のビールを飲むのを常とした。この酒屋も、鎌倉人知る店で、なんとヨーロッパの生ビールも飲める立ち呑みコーナーもある。「朝食」前の朝湯、あるいは、ゆっくり銭湯に入った後で、田村さんは店の上がり框に腰かけて、ゆっくりコップ酒でも呑んだかもしれない。詩人ライフの王道といえよう。これは手軽なので、ぜひお試しあれ。
鎌倉モンパルナス
還暦を過ぎて本格的に鎌倉に移り住んだ田村隆一だけれど、詩人の自伝は、やはり、いくつかの酒場と切り離せないだろう。JR鎌倉駅からすぐの、東急ストア付近の地下に今もある酒場街。そのダンジョンに降り立ったことで、田村さんは鎌倉に居を定めることになった。この酒場街の華やかかりし70年代の頃は、ここに多くの若手作家や詩人(希望者も含め)、アーティストたちが夜な夜な集まって、「鎌倉モンパルナス」の異名をとっていた。還暦を過ぎた田村さんも、夜な夜な円座に加わって、軽やかな饒舌で若者たちを煙に巻いていたかもしれない。随筆に「F」という名前で登場する店が、かっての名残りをとどめていた。
酒器
今回の「田村隆一展」にも出品される予定だが、田村さんはお酒を呑むのにどんな酒器を使ったのだろう。あるインタヴューに、田村さんは、酒の器はこだわらないが、土物は嫌だと答えている。望むらくは、有田などのすっきりした磁器がいい、と。下町の料亭に育った田村さんの、都会人的な洒脱さがみえる。ふだん、田村さんが使っていたのは、悦子夫人の実家にあった、年代物でかなり重い手の、錫製の徳利とお銚子。以前、取材写真で、その詩人の掌のなかで鈍く光る徳利とお銚子を目にしたとき、さすがモダニスト、と、妙に感心したことがある。ここでも、日本の湿潤をおびた抒情性と美学から独特な距離を措いた、田村さんの感性がうかがえる。
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鎌倉、秋、田村隆一のいた小路
テキスト=石田瑞穂 写真=小渕喜幸
秋の川
蝉たちがまだ鳴きしだいている。残暑のつづく九月十八日の午後、わたしたち「Edge」スタッフは、鎌倉駅で落ち合った。詩人、田村隆一を巡るポエトリー・イベント「田村隆一in Memorium」のために、著作権継承者の田村美佐子さん、そして、田村悦子夫人にお会いし、ご挨拶するためである。それと、田村隆一のお墓にも参じて、田村さんご本人に挨拶する。
ほどなくすると、ブラックのパンツスーツ姿の女性が現れた。番組でも拝見した田村さんのご息女、美佐子さんだった。バックの中には、田村さんのお墓にお供えするビールが一缶入れてあるという。銘柄はエビスビール。美佐子さんは番組で拝見したとおりの穏やかなお人柄。田村さんのお墓のある鎌倉の古刹、妙本寺まで駅から先導していただく。その道は、美佐子さんも連れ立った、生前の田村隆一日課の散歩コースでもあった。
鎌倉市場横に入り、くねる路路。何度か、鎌倉唯一の河川、「滑川」(なめりがわ)を渡る。「上水」みたな、ちいさな懐かしい川。むくつけきトンビも水浴びしている。詩人はどんな夢想につかれて、あるいはどんな「リアリティー」の荷物を背負ってこの路を行き来したか。口笛を吹いたり、時には、ステッキを振ったり。むかしむかしのイギリスの詩人、ワーズワスやダンみたく? ご近所の人が、「あの木には、よくカワセミも来ます」と、教えてくれる。


やっと肩をよせあうようになった男と女が、夜の森に見入っている?ぼくらに背を向けて。やがて、いつかはふりかえる。きっとふりかえる。ぼくらの方に、ぼくらの時代にふりかえった瞬間、あの二人は、あの男と女は、いったい、どんな顔をしているのか? どんな顔になっているのか?
ぼくは、そんなことを考えながら、近代美術館から、若宮大路を、一直線に、海に向かって歩いた。滑川の河口に出て、そこから、由比が浜の磯づたいに、材木座海岸の方へ?
(田村隆一「1974秋」)
妙本寺
森に隠された鎌倉の日蓮宗の古刹、比企が谷にある妙本寺の苔むした階段を登りながら、木陰の中を、美佐子さんからぽつりぽつり田村さんのお話を伺う。その貴重なお話の数々は、追々、お話しするとして、まずは田村さんのお墓に向かう。境内には、小林秀雄と中原中也がおとずれて語らった海棠がある。かつてこの木の前で、晩年の田村さんと悦子夫人は、二人双んで、アラーキーこと荒木経惟氏の被写体になったのだった。



石段を上ると、田村さんのお墓。もちろん、墓前に立つのは初めて。きれいに掃き清められている。墓碑には、個人名で、一言「田村隆一」。不謹慎かも知れないが、詩人田村隆一らしい、飾気のないダンディーなお墓に見える。書も、職人さんによるものだという。ほかのお墓と違うのは、横に「1999」とイタリックで刻まれているところ。田村さんは1998年の盛夏に亡くなった。しかし、最後の詩集のタイトルを借りて、詩集と同じ書体で「1999」とお墓の横に刻まれている。美佐子さん曰く、「先生は、21世紀は見たくない、と仰ってました」のだそうだ。だから、「1999」。詩人は、20世紀に生まれ、20世紀を十全に生きた、それで充分だ、ということだと思う。
田村さんの戒名は「想風日居士」、風を想うひと。

お花をお供えし、御挨拶。お墓に水を浴びせ、エビスビール、ワンカップを墓前に供する。「ときどきお墓の前で酒盛りをしている人がいます。幸せですね、先生は」、そう、美佐子さんが言った。

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