監督について

みんなで遺伝子組み換え作物の表示を要求しよう 僕らが知識を得て行動を起こせば、変えることは可能なんだ

ジェレミー・セイファート監督インタビュー

━━なぜ『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』を作ろうと思われたのですか?

もともと遺伝子組み換え作物(GMO)のことを知っていたけれど、2010年にハイチで震災があって、その時に貧しいはずの農民たちが、寄付された種を燃やした事件が印象深くて、疑問に思い調べることにした。そしてこの問題を多くの人と共有したいと思った。「化学会社が君や家族の“食”を牛耳っているぞ」ってね。彼らはその食べものが、体にいいとか悪いとか気にしていない。自分たちの遺伝子組み換え作物を守るために必死なんだ。僕らはその情報を知ることも選ぶこともできない。もし企業による今のやり方が続けば、世界のあらゆるものは遺伝子を組み換えられ、特許を取得され“食″を独占される。すべてをコントロールされ、買う人が食べものを選択する機会も失われるわけだ。そんな世界を子供たちに残したいと思うかい?

━━『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』を見たお客さんには、何を感じてほしいですか?

最初から思っていることは、この映画を遺伝子組み換え作物について何も知らない人に見てほしい。うまいとか、まずいとかの問題じゃなくて、自分がどんなものを食べているか、全然気にしない人たちに見て欲しい。アラバマのアメフト選手に見てほしいし、ウィスコンシン州のおばあちゃん、ラスベガスのディーラー、アメリカ中のキャンディーを食べたり、清涼飲料水を飲んでいる高校生、この不自然な作物の育てるよう強要されている農民、それに安い食べものの中毒になっている大多数の人たちにだ。僕らには知る権利や選ぶ権利があるということを自覚して欲しい。

『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

━━『フード・インク』(2008)は世界的にヒットしましたが、本作との主張はどこが違うと思われますか?

『フード・インク』はアメリカ人に、食糧供給システムが破綻していることと、“食”が農民と我々の健康を犠牲の上に成り立っていることを教えてくれた。あの映画の中でも遺伝子組み換え作物のことや、モンサント社が農家を特許侵害で訴えていることに触れていたけど、本当に理解できた人は少ないんじゃないかな。僕の作品では、見た人の記憶に残るようアプローチしている。我々が何も知らないということを前提に作ったんだ。実際、多くのアメリカ人はGM食品のことなんて知らないし、すでに毎日食べているということすら知らないからね。それと、この作品は情報ドキュメンタリーという枠を越えて、観客は登場する父親や家族と旅をして真実を学び、自分たちの人生に反映できるような作りにしたんだ。

━━この作品から、遺伝子組み換え作物をめぐる現実、食の安全に対して、どう向き合っていけばいいか、そんなヒントを監督の家族たちからもらえたように感じます。

それは嬉しい。問題は山積みだけどね。でも、僕の7歳(当時6歳)の息子のフィンが、映画の中でいいことを言っている。ロサンゼルスの狭い菜園に座っている時に、もしみんなが遺伝子組み換え作物を買うのをやめたら、お店も置かなくなる。そうすれば会社もなくなるってね。まさに、そうなんだよ。僕らが知識を得て行動を起こして、正しいと思うことをやれば、実際に変えることは可能なんだ。僕らは何かを食べるたびに、誰かの何かを儲けさせている、ということを自覚する必要がある。この地球がこのままでいられるような、また地球のためになるようなことにね。自問すればいいんだよ。「自分は育てる人間になりたいのか、それとも搾取する人間になりたいのか」ってね。

━━ごく普通の消費者が遺伝子組み換え作物を避けたり、現在の問題を正すことができますか?

遺伝子組み換え作物の表示を要求して、より多くの情報に貪欲になるべきなんだ。僕が作った映画は、社会に小さな種を植えることができたかもしれないけど、まだひ弱な状態だ。でも、何か疑問を持つ大切さに気づいてもらえたら嬉しい。その気持ちが息子のフィンにも伝わった。彼は種を見て、その中に何があるかを知った、それは美しさだと思う。もし僕らが良い物を愛するようになれば、悪い物はこの世の中から消えるんだよ。

『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』

セイファート監督からのあなたにできること

  • 今日から、食べものを変える(オーガニックで地産地消)
  • よい種とよい農家を見つける
  • 買い物の仕方を変える
  • 社会に参加する
  • 表示義務法案を支持する
  • 食料政策改善を支持する

ジェレミー・セイファート(監督/脚本/編集)

1976年生まれ。2010年、初監督作品『DIVE!』は食料問題や飢餓が環境問題における抜本的な改革として紹介し、世界中の22の映画祭でさまざまな賞を受賞した。その後、制作会社コンペラー・ピクチャーズを創設。現在、映画監督として、また環境活動家として、アメリカ中を旅して、人道主義と環境問題について講演を行っている。本作『パパ、遺伝子組み換えってなぁに?』は2作品目にあたる。
現在(2014年)、ジェレミーと妻のジェンは、ノースカロライナ州アシュヴィルにフィン(7歳)、スコット(4歳)、パール(2歳)の3人の子供と一緒に住んでいる。