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遺伝子組み換え食品について

普段スーパーでよく目にする「遺伝子組み換えでない」という表記、この表記のものを選んでいれば、私たちは遺伝子組み換え作物を避けているということになるのでしょうか?答えは“NO”です。家畜の飼料、甘味料、油、しょうゆ、加工食品など、遺伝子組み換え食品は、さまざまな姿で表示されない形で、すでに遺伝子組み換え作物は私たちの食卓へのぼっています。私たちの食卓に潜む遺伝子組み換え作物、果たしてどういった食べものなのでしょう。

※写真注:OGM (Organisme Génétiquement Modifié)フランス語でGMO (Genetically Modified Organism)の意。

日本の遺伝子組み換え事情Q&A

Q:日本では、どんな遺伝子組み換え作物が認められていますか?

A:日本で安全性を確認され、販売、流通が認められているのは食品8作物(299品種)です。(2015年1月現在)

◆大豆(特定の除草剤で枯れない、特定の成分[オレイン酸など]を多く含む)
→家畜飼料、豆腐、油揚げ、納豆、
◆ジャガイモ(害虫に強い、ウィルス病に強い)
◆ナタネ(特定の除草剤で枯れない)→ナタネ油
◆とうもろこし(特定の除草剤で枯れない、害虫に強い) →家畜の飼料用、フレークやお菓子など ※とうもろこしを粉砕して皮と胚芽を取り除いたもの(胚乳)
◆わた(害虫に強い、特定の除草剤で枯れない)→綿実油
◆てんさい(砂糖大根)(特定の除草剤で枯れない)→シュガー
◆アルファルファ(特定の除草剤で枯れない)→家畜飼料、スプラウト
◆パパイヤ(ウィルス病に強い)

※遺伝子組み換え作物(大豆など8品目)のうち、そのまま流通するのはパパイアだけで、あとは流通が可能にも関わらず、消費者が不信感を持つなど需要がないため全く市場には出回っていませんが、飼料や加工品として流通しています。


Q:日本の私たちの食卓には、遺伝子組み換え作物はどのくらい含まれているのでしょうか?表示の義務はありますか?

A:あります。遺伝子組み換え作物を市場に出すときは、必ずラベル表示をしなければなりません。

しかし、遺伝子組み換え食品由来の原料を使用した加工食品の場合、表示に抜け道があります。全原材料のうち、重量の割合が上から3番目までで、原材料中に占める重量が5%以上のものが、『遺伝子組み換え』であるという表示を義務付けられています。このため遺伝子組み換え作物を原材料に使用されていても、表示されない食品が多数あります。消費者が知ることが出来る食品は市場に出回っている中のごくわずかとされています。お豆腐や納豆で私たちが、よく目にする『遺伝子組み換えでない』という表示は任意で、メーカーが自発的に表記しているものです。


Q:食用油やしょうゆが遺伝子組み換え作物を加工した食品にも関わらず、表示の義務がないのはなぜですか?

A:遺伝子組み換え作物には、人為的に導入された遺伝子やその遺伝子が作るタンパク質が新たに含まれているが、油のように精製抽出されたり、しょう油のように発酵分解した食品は遺伝子組み換え由来のタンパク質は検出されないから表示義務は必要ないとされています。

EUでは元の作物が遺伝子組み換えなら、その加工食品はすべて表示義務となっています。


Q:他にも、表示の義務がない食品はありますか?

A:あります。主に加工食品で、私たちは遺伝子組み換えトウモロコシを間接的に摂取しています。

例えば、清涼飲料水に含まれる異性化糖、果糖ブドウ糖液糖です。トウモロコシを糖化してできた安価な糖分です。他にも、コーンスターチ、大豆レシチンなどが加工食品に広く使われています。


Q:卵、牛乳、肉なども、遺伝子組み換え作物は関係しているのですか?

A:畜産物には、『遺伝子組み換え』の表示義務はありません。

日本は家畜の飼料をほぼ全量が輸入に頼っているのが現状です。飼料として使われるのは、遺伝子組み換えの大豆かすやトウモロコシです。

遺伝子組み換え技術とは?

遺伝子暗号を解析し、ある特定の遺伝子の働きを、別の遺伝子に挿入して新しい性質をもった生物を作り出す化学技術。作中では、遺伝子組み換えトウモロコシの説明がある。除草剤に耐性のある遺伝子をバクテリアから抽出し、それを金の粒子に付着させ遺伝子銃で大豆の遺伝子内に挿入する方法が紹介されている。

遺伝子組み換え作物には、どんな種類があるの?

世界保健機関(WHO) は、遺伝子組み換え作物(GMO)をこのように定義している。「遺伝形質(DNA)の有機体を自然には起こらない方法で変えたもの」。簡単に分けると、二種類の遺伝子組み換え作物がある。

1)除草剤耐性作物
除草剤をかけても枯れない品種。その除草剤とセットで販売されている。

2)害虫抵抗性作物
バクテリアを組み込み、害虫を殺す毒素を自らつくる品種。

作中に登場するモンサント社はどんな会社?

1901年にアメリカで設立され、世界46カ国に進出している巨大アグロバイオ企業。現在に至るまで、市場に送り出した製品は、PCB、甘味料アスパルテーム、枯葉剤エージェントオレンジ、牛成長ホルモン剤、除草剤ラウンドアップ、そして遺伝子組み換え生物。その多くが、環境や健康への悪影響が指摘されて問題を起こしている。1995年からの10年間でモンサントは世界の50の種子企業を買収し、遺伝子組み換え市場の90%を占め、今では、国際種子市場のトップをしめる巨大種子企業でもある。日本には、日本モンサント株式会社が東銀座にある。

ラウンドアップ
モンサントの主力の売上を誇る除草剤グリホサートの商品名。「生分解性で、環境に優しい」がキャッチコピーだが、過去に虚偽広告により、ニューヨーク(1996)とフランス(2007)で有罪判決を受けている。モンサントの社内研究でも、生分解は2%のみと結果が出ていたという。世界でもっとも売れた除草剤。日本の量販店やホームセンターでも販売されている。

ラウンドアップ・耐性(レディ)作物
ラウンドアップとセットで売られるラウンドアップに耐性のある遺伝子組み換え作物。その安全性については、現在も賛否両論。日本でも、1996年にラウンドアップ・耐性大豆の輸入は認可され、健康、環境への安全性は立証されていない。近年はバイオ燃料へ原料として注目され、需要が高まっている。

遺伝子組み換え作物はどのくらい世界に広がっているの?

栽培している遺伝子組み換え作物

世界の遺伝子組み換え作付け面積は1億4800万ヘクタールに及ぶ。遺伝子組み換え作物の大豆、トウモロコシ、綿、小麦だけでなく、トマトやジャガイモなど野菜もある。遺伝子組み換え作物の作付面積のその70%がラウンドアップ耐性作物だ。アメリカ大陸を中心にアジア、オーストラリアへと拡大している。

アメリカ 大豆、とうもろこし、綿、ナタネ、かぼちゃ、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ
ブラジル 大豆、とうもろこし、綿
カナダ ナタネ、とうもろこし、大豆、テンサイ
中国 綿、パパイヤ、ポプラ、トマト、甘胡椒
インド 綿

(出典:ISAAA国際アグリバイオ技術事業団) 

急速に拡大していく遺伝子組み換え作物。その裏側にはどのような仕掛けがあるのでしょう。

回転ドア ~FDA(Food and Drug Administration)とマイケル・テイラーという男
アメリカ食品医薬品局。食品と薬品の安全性を守るアメリカ政府機関。日本の厚生労働省に近い役割。バイオテクノロジー産業は1999年~2009年のロビー活動に5.5億ドルを投資、300人以上の元官僚がバイテク産業のロビイストとして活躍している(本編より)、遺伝子組み換え作物拡大の背後には、アメリカ政府と企業の癒着が存在する。それを、“回転ドア”と呼ばれ、GM食品の規制撤廃や緩和に繋がっている。マイケル・テイラーはその象徴的な存在。FDAの弁護士から、モンサントの顧問弁護士事務所に転職。再び、FDAに戻りGM牛成長ホルモンを認可を進める。その後、農務省の食品安全検査局長となり、三度モンサントに戻る。そして、FDAのNO2の座につき、GMアルファルファと、GMサーモンの規制撤廃を推進したという。

実質的同等性の法則
これまで人が食べてきた自然のままの作物と遺伝子組み換え作物の、姿や形、主要成分、性質などで比較し、ほぼ同等とみなすことができれば、その作物の安全性は自然の作物と同等であるという考え。安全性がもとの作物と変わらない以上、つくり方の違いは問題とされるべきではなく、その表示はいっさい不要であるという。これが世界中で採用され、遺伝子組み換え作物の認可を推し進めている。