主人公のサイードは一旦自爆攻撃をためらいます。その時バスにはイスラエルの子供たちが乗っていました。そして、最後に決心をしてテルアビブでバスに乗りバスには多くのイスラエル兵が乗っています。カメラはサイードの顔によって行き、音もなく真っ白になるところで映画は終わります。

「この映画の主人公サイードは宿命を受け入れて自決しますが、私はそれを自分で決めさせたかった。宿命を提示するのはジャマールです。サイードは軍事責任者アブ・カレムに、自分の決意を表明します。これが、西洋の観客にしかけた、私の最初のトリックです。彼は組織のために死ぬのではなく、自分の意志があるのです。もうひとつ仕掛けがあります。彼にはバスを吹き飛ばすチャンスもあったのにそうしなかった。子供たちを道づれにできなかったからです。でも、二度目の時は、兵士は自分と同一視できるので、最後は、兵士で一杯のバスに乗っているシーンです。彼にも主義があったのです。西洋のドラマが重要とみなす、意志と主義がここにあります。私は純粋に芸術的な表現を作るのではなく、物語による見解を提示しているのです。私の考えでは、宿命は変えることが出来ても、信念は変えることが出来ないものです。それを示したかった。」

ハニ・アブ・アサド