映画『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』

この映画について

DIRECTOR'S NOTE 監督のことば

サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ

フィルム技術は発展し洗練され、 100年以上にわたって映画制作の唯一の方法でしたが、 それが時代遅れになる日も近いかもしれません。クリス・ケニーリー

2010年秋、私は『フェイク・クライム』(マルコム・ヴェンヴィル監督)という作品で、キアヌ・リーブスと仕事を共にしました。私はポストプロダクション監修、キアヌはプロデューサー兼主演でした。キアヌは、映画制作の過程全体を理解しようとしていました。ニューヨークのテクニカラー社でDI(Digital Intermediate:現像したネガ・フィルムをスキャン後、デジタル処理を行い上映素材を作るまでのプロセス)のカラー調整をしていた時、彼はひっきりなしに私や撮影監督のポール・キャメロンはじめスタッフに質問を浴びせかけました。私たちは現像所の中を歩き回り、フローチャートを描き、建物の隅々まで探検し、専門家からネガ編集者にまで話しかけました。デジタル技術が映画のすべての側面を変えていることについて大いに意見を交わしました。私たちは、ポストプロダクションの主な領域でいかにデジタルがフィルムに代わるようになったか、編集、視覚効果、カラー調整の一般的方法となったかについて語り合ったのです。

セットにおける撮影と劇場での映写は、フィルムがまだ主力である領域です。フィルム映像は独特の味わいがあり、多くの監督や撮影監督はいまもデジタルよりフィルムを好みます。しかし、デジタル技術は進歩を続けており、デジタルカメラが撮影の主流としてフィルムを凌駕するのも時間の問題でしょう。デジタルによる配給や映写は、コストと扱い易さや、その画質の高さにより拡大を続けており、フィルム現像の必要性は低下していくと思われます。フィルム技術は発展し洗練され、100年以上にわたって映画制作の唯一の方法でしたが、それが時代遅れになる日も近いかもしれません。

キアヌと私は、映画産業が大きな転換点に立っているという点で意見が一致しました。映像の歴史が大きく動く時期にきているのです。私たちはデジタル技術の起源と、それがいかに進化してきたかを探りたいと思いました。私たちの議論を内輪にとどめず、監督や撮影監督をはじめ映画産業に携わる人々に広げ、彼らがこの革命をどうとらえているのかを知りたいと思いました。キアヌと私は小さなチームを結成し、映画産業のこの変化を記録することにしました。

本作は、監督、撮影監督、カラリストが何日もかけて制作したデジタル映像をフィルムに戻す際の、カラー調整の最後の瞬間に触れています。デジタル映像とフィルム映像が、文字どおりサイド・バイ・サイドに(=隣り合って)映し出され、劇場で映写されるフィルムの映像がデジタルで作られたものと同じように見えることを確認するのです。現在、フィルムとデジタルは互角ですが、デジタルがフィルムを超えて映像の制作、ポストプロダクション、配給の主流となるまで、この2つの技術が共存する期間がどれくらい続くかは誰にも分かりません。

クリス・ケニーリー プロフィール

クリス・ケニーリー監督

1970年コネチカット州ハートフォード生まれ。1998年より映画界に携わる。2004年に監督したドキュメンタリー"Crazy Legs Conti: Zen and the Art of Competitive Eating"がトライベッカ映画祭でプレミア上映される。2010年、『フェイク・クライム』(マルコム・ヴェンヴィル監督/アリのフィルム・カメラArricamSTとArriflex235で撮影され、フィルムをスキャン後、デジタルで色調整などを行い、デジタルデータから上映素材のフィルムに変換するDI処理が行われた) のポストプロダクションに参加していた際に、キアヌ・リーブスと本作を撮る企画を立ち上げた。

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