“正義の味方”を夢見て警察官になったシンゴ(加瀬亮)は、無機質なオフィスでのデスクワークにうんざりする日々。ある日、シンゴはバスジャックに遭遇する。乗り合わせていたのは、テツ(オダギリ ジョー)とサングラスをかけた女、サキ(栗山千明)。
テツの言葉をきっかけに、社会に絶望した人々の願いを叶える“復讐代行”というゲームをはじめるテツとシンゴ。それは一見、鬱屈を解放するためのささやかな反抗だった。しかし、その行為は次第に現実を侵食し、彼ら自身が社会の闇へと呑み込まれていく。


2005年、その過激な衝動と危うさが強烈なインパクトを与えた映画『スクラップ・ヘブン』。「この世の中、想像力が足りねえんだよ」という叫びが、21年ぶりに再度スクリーンで響き渡る──。映画『国宝』を監督し、第49回日本アカデミー賞では最優秀監督賞を受賞した李相日のメジャーデビュー2作目が本作だ。
李相日によるオリジナル脚本でもあり、まさに原点といえる作品である。そして、加瀬亮×オダギリジョー×栗山千明という豪華共演陣とタッグを組み、3人のキャラクターの魅力を存分に引きだしている。
当時「今このとき、このメンバーでしか出来なかった」とストレートな思いを本作にこめた。
劇中に描かれる「日常の鬱屈」「自身の存在意義への問い」は色褪せない普遍的なテーマとして現代に鋭く問いかける。
監督の社会への鋭い眼差しと詩的な感性が早くも際立っている作品だ。
2005年公開当時、「いまこの瞬間の熱」を封じ込めた奇跡のキャスティングは、2026年のリバイバル上映で新鮮な魅力をみせる。
加瀬亮は、繊細さと暴力性を同居させる演技が光り、そのグラデーションにふと足元をすくわれるような感覚を引き起こす。
オダギリジョーは、テツの飄々とした軽さでその場を支配し、次の瞬間核心を突く、そんな動きに目が離せなくなる“カリスマ性”を見事に体現している。
そして栗山千明は、クールネスと危うさのバランスで、サキというキャラクターの孤独と爆発性をいまなお鮮烈に焼き付ける。
旬の“新世代”だった彼らが20年の時を経た今、『スクラップ・ヘブン』の怒りやユーモア、そして「想像力」という言葉を、当時以上に現実へ接続させる。

“正義の味方”を夢見て警察官になったシンゴ(加瀬亮)は、無機質なオフィスでのデスクワークにうんざりする日々。ある日、シンゴはバスジャックに遭遇する。乗り合わせていたのは、テツ(オダギリ ジョー)とサングラスをかけた女、サキ(栗山千明)。
テツの言葉をきっかけに、社会に絶望した人々の願いを叶える“復讐代行”というゲームをはじめるテツとシンゴ。それは一見、鬱屈を解放するためのささやかな反抗だった。しかし、その行為は次第に現実を侵食し、彼ら自身が社会の闇へと呑み込まれていく。


1974年新潟県生まれ。大学卒業後、日本映画学校に入学し映画を学ぶ。卒業制作作品『青~chong~』(01)が「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリを含む史上初の4部門を独占。スカラシップ作品として製作された『BORDER LINE』(02)で得た高い評価により、村上龍原作・宮藤官九郎脚本のメジャー作品『69 sixty nine』(04)に異例の大抜擢。続いて、『スクラップ・ヘブン』(05)を製作した。『フラガール』(06)は第80回キネマ旬報日本映画ベストテン第1位や第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞など、その年の国内の映画賞を総なめにし、日本代表作品として第79回米アカデミー賞外国語映画部門にエントリーされた。4年ぶりの長編『悪人』(10)は第34回日本アカデミー賞優秀作品賞受賞ほか、モントリオール世界映画祭や釜山国際映画祭で上映され、国内外で高い評価を得ている。その後も『許されざる者』(13)、『怒り』(16)、『流浪の月』(22)と数々のヒット作を生み出す。『国宝』(25)は邦画実写映画初の興収200億を突破し、第98回米アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートの快挙を果たした。
“若気の至りならではな気恥ずかしさと、真っ直ぐな熱情への羨ましさがない交ぜとなる。色褪せない俳優たちの瑞々しさから、映画の色香を嗅ぎとってもらえれば本望です”