Influenza ポン・ジュノ監督
韓国 | 2004年 | 28分| デジタルβ | モノクロ
三人三色

この映画は、チョウ・ヒュクレという男が漢江(ハンガン)の橋の上に危なげにたたずんでいるシーンから始まる。
それは監視カメラに無防備に写された悲しげな映像で、カメラは引き続き、どん底に堕ちていくチョウ氏とその周りにいる私達をとらえていく。そのカメラを通した”リアルな”映像は、時間が経つにつれ、どんどんと崩壊していくことになる。

「韓国の辞書でインフルエンザと牽くと、次の様な意味が書いてあります。1.悪性の風邪(英語で言うところのFlu)、2.(経済的またはイデオロギー的な意味での)トレンド。2000年、韓国の不景気は相変わらずで、私達の日常の一部にさえなっていました。不景気によるヒステリーで憂鬱になった人々の間に広まった暴力は、トレンド=インフルエンザとなったのです。人々は、ゆっくりと少しずつ、しかししかし不可避的に狂気に走っていく様でした。もちろん、表面的には全てがノーマルに見えたのですが、その見えない暴力ウィルスは、ゆっくりと私達の体内で広がっていったのです。 最も恐ろしい部分というのは、暴力そのものではなく、人が暴力に対して無感覚になってしまうということ。人は殺人事件や集団自殺といった事件の新聞記事を無感覚のうちに読み、人々は、強度の刺激が増長されない限り反応さえしなくなっているのです。この様な暴力や残虐行為は、全ての物事のただの一部分となり、冷たく無慈悲な監視カメラは、これらをただ映すだけです。おそらく人々は、またたく間に、まるで監視カメラの様に冷たくて無感覚になっていってしまうのでしょう。」

監督監督監督



チョウ・ヒュクレ:ユン・チェムン/大女:コ・スヒ/その他:パク・ジンウ、オ・ドクスン、スン・ジュンスン、リ・ジュンオク、リ・ダイル、イム・キュンラン、パク・ダキョン、キム・ヤンジュン、キム・ヒャンジュン

監督・脚本:ポン・ジュノ/プロデューサー:ジョ・ネヨン/助監督:チョイ・ケムハ、ペク・チュルヒュン、ハ・ジュンオン/スクリプター:ガン・ジイ/ラインプロデューサー:パク・ボンス/制作アシスタント:リ・イェンホ、チョイ・ユナ/撮影監督:キム・ビョンジュン/メイキング監督:パク・キョンモク/メイクアップ:キム・イソク/編集:リ・ムンホ/音楽:アン・ヒュソク/英語字幕:ダーシー・パクエット。ヨン・ヒョンソク/エキストラ・エージェンシー:リ・オクヒ/サウンドスーパーバイザ:リヴ・トーン

使用デジタルカメラ:Panasonic DVX100A/使用編集ソフト:Final Cut Pro

監督
1969年生まれ。延世大学で社会学を修業後、1993年に初の16mm短編映画『白色人〜White Man』を制作し、シニョン青少年映画祭で奨励賞を受賞。1995年韓国の映画アカデミーを卒業。卒業作品として制作した『支離滅裂〜Incoherent』は、社会風刺と監督の持つ独特のユーモアセンスのあいまったブラックユーモアで、この作品により彼の評判は一気に高まった。『支離滅裂』は単なる卒業制作映画だったにも関わらず、バンクーバー映画祭と香港国際映画祭で公式上映され、その監督の作家性に熱狂的な支持が集まった。『モーテルカクタス』(パク・キヨン監督/1997年)で助監督を務めた後、長編映画としては初の作品となる『ほえる犬は噛まない』(2000年)を監督。この作品は、インテリ層から中流家庭層までが住む集団アパートで、行方不明になった犬をめぐるさまざまな人間模様を描いており、リアリティとファンタジー、皮肉と同情を交錯させた独特の映画として高く評価された。2003年、実際にあった猟奇連続殺人事件をもとにした長編二作目にあたる『殺人の追憶』を監督。洗練されたカメラワークと、ドラマの基本に忠実でありながら人間の本質にせまるその脚本は、彼を一躍スター監督の地位にのし上げた。本作品は韓国で500万人以上を動員するヒットとなり、日本でも大ブレイクした。

1993 「白色人(原題)」 /1994 『支離滅裂(原題)』 /2000 『ほえる犬は噛まない』(日本公開2004年) /2003 「浮き沈み(原題)」/2004 『殺人の追憶』(日本公開2004年)