イントロダクション

様々な民族と文化が交錯する地 中央アジア、カザフスタンで生きる子供たち

2009年7月5日、新疆(しんきょう)ウイグル自治区で発生した抗議デモは多くの死傷者を生み、今なおその動向が注目されているが、事件の真相についてウイグル人の声はほとんど届いていない。

『ウイグルからきた少年』は、カザフスタン映画『ラストホリデー』(アミール・カラクーロフ監督)などのプロデューサーとして知られる現役自衛官の佐野伸寿監督が、カザフスタンやイラクに滞在した経験をヒントに中央アジアの現状とそこに生きる人々の生活を描いた作品だ。

監督は、「忘れ去られてしまいかねないウイグルの存在を知ってほしい」という想いを込め、新疆ウイグル自治区からカザフスタンのアルマトイに逃げてきたウイグル人の少年が、大人の思惑により自爆攻撃者に仕立て上げられていく様をフィクションとして描いていく。

民族も言葉も異なるウイグル、ロシア、カザフスタンの3人の子供たちの、純粋で無垢ゆえの破滅への道のりを、そこに彼らが生きている息吹を確認するかのように、カメラは静かに見つめ続ける。

ウイグル民族とは

<ウイグル民族とは>

主に中央アジアのタリム盆地に居住する民族で人口は1千万人弱。テュルク諸語のウイグル語を話すイスラム教徒。

かつて「東トルキスタン共和国」という国をもっていたが、ソ連と中国の密約により第2次世界大戦終戦直後に国家を失い、現在では自治区とは名ばかりの「新疆ウイグル自治区」と称され、中国の統治下にある。ウイグル民族は、カザフスタンやキルギス、ウズベキスタンなどにも少数居住している。


第32回モントリオール世界映画祭公式招待作品
監督・脚本・編集:佐野伸寿
撮影:ボリス・トロシェフ  エンディングテーマ:KOKIA「Lacrima」
出演:ラスール・ウルミリャロフ、カエサル・ドイセハノフ、アナスタシア・ビルツォーバ、ダルジャン・オミルバエフ他
原題:YASHI  2008年 / 日本・ロシア・カザフスタン / video / 65分 / カラー / 16:9 / ウイグル語・カザフ語・ロシア語
配給・宣伝:アップリンク