コメント

順不同、敬称略

 私なんかはすべてをあきらめた世代だ。気づけば、戦争も、安保も、高度経済成長も、何もかも既に片が付き、そして敗れていた。闘う相手もわからず、結託する仲間もおらず、過去やアメリカに対して無感覚でいるしか自分の世代や生活を正当化できない。
 いや、しかし。
 こんなていたらくになることこそが、奴らの狙いだったのではないか?お前ら、思うツボになっていないか。娼婦でいいのか。ヒモでいいのかよ。
 映し出される芸術作品の断片の強烈な圧力に迫られて、どちらの国の国民も、脂汗をかかずにすむ者はいないだろう。日本(娼婦)とアメリカ(ヒモ)。そのはざまに生まれ落ちたリンダ・ホーグランドの静かで燃えるような、祈りの結実である。

─ 西川美和

(映画監督)

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映画「ANPO」には、意志が強く、物事に動じない日本人が復活するための手がかりが詰まっている。
リンダ・ホークランド監督の我々日本人への大切な贈り物だ。

─ 役所広司

(俳優)

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未来、僕たちが何処に向かうのか皆目見えないけれど、過去、僕たちが何処にいて、現在、僕たちが何処に漂っているのか、この作品は明快に示してくれる。コカ・コーラを飲み、ジーンズを履くとき、すべてはここから始まったのだと、僕たちはもう一度確かめるべきだろう。

そして、この作品のARTは次々と僕たちの心に棘を突き刺す。ぐさりと刺さったその心の棘を観終わった後も暫くは抜かないほうがいいだろう。HEARTの中にはARTが含まれるってことに、僕は恥ずかしながら、いま頃気づいた。戦後はまだ終わっていない。

─ 阪本順治

(映画監督)

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この映画は、日本に生まれ育ったアメリカ人である監督が自らのアイデンティティーに深く刻まれた「加害性」というものと真摯に向き合った記録である。

そして、50年前の表現者たちがどのように真摯に政治と、安保と向き合い、その「傷」を表現の中に刻み付けたかについての貴重な記録でもある。映画は、当時と変わらずに日本に駐留し続けている米軍に対して、「日米同盟」と呼ばれるようになったふたつの国の関係に対して、果たして今、表現者は、市民は、どのような態度をとり得るのか?ということを鋭く、問う。

このような問いを日本人である僕らが自ら問えなかったという忸怩たる思い以上に、私達の国に固有なこれらの問題が、他者の目に今、どのようなものとして映っているのかを知らしめてくれる僥倖として捉えたい。「基地問題」が再び注目を集める今、非常にタイムリーな作品であり、また、その存在の責任を沖縄に押し付け、そして怒りの矛先を、問題を解決できない政府に向けてことたれりとしている私達が、今一度、自らの問題として日米の関係を真摯に考えるための、これは非常に貴重なきっかけになりうる作品であると、僕は考える。

─ 是枝裕和

(映画監督)

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