プロダクションノート


1981年、観光客として始めて現地を訪れた私はビルマ人の親しみやすさに魅了されました。2度目の訪問は1998年の事です。民衆によるデモについて知ってはいましたが、この魅力的な国で起きていた残酷な現実については理解していませんでした。スイスに帰国し調査を進める中、国連の担当官等と会い軍事政権による深刻な人権侵害が事実であることに確証を得て、撮影を開始しました。

正規の取材ビザがおりず、観光用のPR番組の撮影と偽りビザを取得しました。特注のバックに機材を忍ばせて国境地帯へ潜入した撮影クルーにとって取材は常に身の危険を伴うものでした。全ビルマ学生民主戦線のベースキャンプでの 2日間にわたるインタビュー取材の後、私たちは司令官から彼らのジャングルでの偵察に同行する許可を得ることができました。日が暮れる頃、私たちは機関銃や砲弾で重装備した兵士たちと共に出発しました。旅程は厳しく、斜面を登っては下り、食料と水は限られていました。民間人と出会うことはなく、少し離れたところでは銃声が響いていました。

インタビューに応じてくれた人々に撮影の目的を伝えると、眼差しに、きっといつの日か国際社会の介入によって厳しい現状から解放されるという一点の希望の光が見えました。

今後の課題は、ビルマの問題を再び風化させないことです。
子供たちは希望を持って未来を生きようとしています、「大人になったら教師になって故郷で教えたい」と。
ビルマの少数民族がおかれている現状を一人でも多くの日本の方々に知ってほしいのです。

-アイリーヌ・マーティー監督

監督プロフィール


アイリーヌ・マーティー監督

1958年9月27日、スイスのアルトドルフ生まれ

2人の姉妹と3人の兄弟と幼少期をスイスで過ごし、大学卒業後に世界旅行に出る。

1979年、カリフォルニアのサンフランシスコに移り、アメリカとアジアでドキュメンタリーを製作するZDFテレビのアシスタント・プロデューサー兼助監督を務める。その後、アメリカの映画業界でプロダクション・マネージャー兼、助監督としてキャリアを積み、1985年に帰郷。

スイス国営放送局にて生放送のエンタテインメント及び情報番組のディレクターとしてのトレーニングを2年間受け、1990年にKAIROS-Filmを設立、その後はフリーランスの監督、ライター、プロデューサーを務める。2005年には"aproposfilm"を設立し、代表および監督、作家として活躍。

KAIROS-Film設立以来、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、アジアで様々な作品を撮っている。