インタビュー


まとめ 古居氏 四方田氏 足立氏

古居みずえ氏との対談

一番私が共感を得たのは、主人公が普通の人だったということなんです

古居: 私が初めてパレスチナに行ったのは1988年、最初に訪れた場所がこの作品の撮影場所でもあるヨルダン川西岸のナブルスなんです。小高い山に囲まれたこの街は朝日と夕日がすごく綺麗で、街がピンク色に染まるんです。すごく美しい場所なんですよね。
そのナブルスで撮影した『パラダイス・ナウ』は、とてもリアルに感じました。フィクションであるにも関わらず、自分もその場所にいる当事者のような気持ちになって、恐怖すら感じました。私がパレスチナに滞在している時も自爆の事件がありました。取材ももちろんしましたが、やはり現実的にはそれをずっと追いかけてドキュメンタリーにするには無理があるんです。というのはその行為自体が極秘で行われていて、誰がいつ決行するのかわからない。たとえ肉親であってもそれを事前に知ることはできないので不可能です。フィクションだからこそ可能なんです。


アサド: フィクションの大切な点というのは登場人物の気持ちにどれだけ感情移入できるかということだと思います。現実であればその主人公の近くにさえ住みたくないと思うような恐ろしいことでも、映画の中でその生活を味わうことができます。パレスチナを既によく知っているあなたが、この映画をみてその場所に行っているような気持ちになったことはとても嬉しいですね。


古居: 一番私が共感を得たのは、主人公が普通の人だったということなんです。本当にそのへんにいるパレスチナ人だったんですね。現実には本当に普通の人が追い詰められて自爆攻撃をしていて、そういう意味ではあの映画は現実性があるなと思ったんです。そしてどこにも片寄ってないというか、マスコミであれば「過激派」「自爆テロ」と書いたりしますが、そういう感じではなく、だから観客はすっと入っていけるのだと思います。ただ彼らがなぜそこまで追い詰められたのかという場面が描かれてないのかを、お聞きしたいですね。


アサド: 私はとにかく48時間の中でかれらに何が起こったのかということを集中して描きたかった。それはなぜ彼らが自爆攻撃をしたのか説明することよりも大事だと思いました。あまり説明してしまうと観客との繋がりが失われてしまうのです。もし、もっと説明したい場合私はドキュメンタリーという手法を選ぶでしょう。


古居: わかります。あの中でもし動機づけ−肉親、子供を殺されたりだとか−そういう感情的なものをもっと入れてしまうと、48時間を描くという焦点がぼやけてしまうかもしれませんね。

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パンフレットは映画上映期間中、劇場窓口にて購入できます。


<古居みずえ氏プロフィール>
1948年島根県生まれ。アジアプレス所属。JVJA会員。1988年よりイスラエル占領地を訪れ、パレスチナ人による抵抗運動・インティファーダを取材。パレスチナの人々、特に女性や子どもたちに焦点をあて、取材活動を続けている。93年にはボスニア・ヘルチェゴビナ、98年にはアフリカのウガンダ、インドネシアのアチェ自治州、2000年、2002年にはタリバン政権下とタリバン崩壊後のアフガニスタンを訪れる。イスラム圏の女性たちの取材や、アフリカの子どもたちの現状を取材。新聞、雑誌、テレビで発表。著書に「インティファーダの女たち」(彩流社)、 「ガーダ‐女たちのパレスチナ‐」(岩波書店)現在、映画『ガーダ ‐パレスチナの詩‐』を全国にて自主上映中

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