<イワサヒサヤとはナニモノだったのか?>追悼 映像作家・岩佐寿弥特集

上映終了

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日時
上映終了
料金
一般¥1,200 / シニア・学生・UPLINK会員¥1,000 / 三回券¥2,700/パスポート券¥10,000/『オロ』はUPLINKパスポート適用あり、その他の作品は適用外となります。
会場
FACTORY(1F),X(2F),ROOM(2F)

~遊びをせんとや生れけむ~


岩波映画の共闘集団「青の会」から出発し、前衛映画、テレビ作品を経て、愛するチベットに至った映像作家・岩佐寿弥(1934-2013)。
遺作となった『オロ』を含む代表作13作品を、一挙上映!



微笑と前衛


『叛軍No.4』を初めて観た時、ドキュメンタリーなるただでさえ曖昧な概念が、もろくも崩れ落ちた。また『眠れ蜜』の吉行和子は、映画が進むにつれて三つの自己に引き裂かれていった。岩波映画の若きスタッフ集団「青の会」がいかにドキュメンタリーの原理に肉薄したか、それをいちばん思い知ったのは、実はこうした岩佐監督の後年の長篇を知った時である。だが、どんな強面の方だろうと想像しつつお会いした監督は、明るい微笑みの人であった。
 結局遺作となった『オロ』は、その微笑みと、映画を定義し直そうとする実験性がハーモニーの域に達した暖かい一本だった。それには当然まだ続きがあると信じていたのだが…。とんでもない種明かしが準備されているのでは、と頭のどこかでまだ思っている。
 前衛は、私たちの日々の中にある。前衛は、どこへでも連れて歩くことができる。さらに監督は海外取材テレビ番組の名手でもあった。遺された作品を改めて観直し、そのたおやかな行動主義を引き継ぐことが今の私たちに求められている。

岡田秀則(映画研究者/東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)


【上映作品】

『オロ』

(2012年/108分/チベット語・日本語/HD/カラー/日本語字幕付き)














監督:岩佐寿弥 プロデューサー:代島治彦 撮影:津村和比古 音楽:大友良英 絵・題字:下田昌克 整音:滝澤 修 通訳・コーディネーター:ツェワン・ギャルツェン ボランチ:南 椌椌 制作:スコブル工房 企画・製作:オロ製作委員会

【STORY】6歳のときにヒマラヤを超えて、チベットから亡命した少年・オロ。「なぜ母はぼくを異国へ旅立たせたのだろうか」。自力でその答え=生きる道を探し求めるオロの姿を一台のキャメラが撮影しつづけた。「映画の着手から完成までの3年間に、ぼくのなかでオロは〈チベットの少年〉という枠をこえて、地球上のすべての少年を象徴するまでに変容していった」(岩佐寿弥)

岩佐監督が亡くなったことを知らされたオロからメッセージが届きました。
「監督は優しかった。びっくりして、悲しい。チベットのことを世界に知らせる仕事をしてくれて、ほんとうにありがとう。チベットが大好きだったから、来世はきっとチベット人に生まれ変わるでしょう」(オロ)

7/6(土)12:30
7/8(月)~7/19(金)12:30
7/20(土)13:00
7/21(日)13:00/18:15※18:15の回上映後、スペシャルライブ&トーク開催!
出演:大友良英(音楽)、下田昌克(似顔絵)、津村和比古(撮影)、代島治彦(編集)

7/22(月)~7/25(木)18:15
7/26(金)13:00



『ある機関助士』

(1963年/37分/16mm/カラー/岩波映画製作所)

監督・脚本:土本典昭 撮影:根岸 栄 録音:安田哲男 音楽:三木 稔 監督助手:岩佐寿弥

【STORY】蒸気機関車の機関士とその助手の共同作業を軸に、彼らの仕事ぶりを描く土本典昭のデビュー作。岩佐寿弥にとっても本格的な映画製作への初参加となる。本作は鉄道の安全性をPRする目的で国鉄が企画したものだったが、土本によって機関助士らの過酷な労働をあぶり出す傑作ドキュメンタリ−となった。芸術祭文部大臣賞受賞、キネマ旬報短編ベストテン第一位。

7/10(水)20:30
7/13(土)15:00



『彼女と彼』

(1963年/106分/16mm/白黒/岩波映画製作所)

監督・脚本:羽仁 進 脚本:清水邦夫 脚本協力:岩佐寿弥 撮影:長野重一 録音:安田哲男 編集:土本典昭 音楽:武満 徹 出演:左 幸子、岡田英次、山下菊二ほか 

【STORY】脚本家・清水邦夫、音楽家・武満徹、写真家・長野重一(撮影)を起用した野心作。団地の平凡な主婦(左幸子)がバタヤ部落の男(前衛画家・山下菊二)の生き方に魅かれていく姿を通して、人間にとって自由とは何かを問いかける。羽仁監督によると、脚本に協力した岩佐寿弥はロケや編集の現場にも通ってきたという。第14回ベルリン映画祭特別賞受賞。

7/14(日)15:00
7/18(木)20:30



『とべない沈黙』

(1965年/105分/35mm/白黒/日映新社・東宝)

監督:黒木和雄 脚本:松川八洲雄、岩佐寿弥、黒木和雄 撮影:鈴木達夫 美術:山下 宏 録音:加藤一郎 音楽:松村禎三 助監督:東 陽一 監督助手:岩佐寿弥、前田勝弘 出演:加賀まりこ、平中 実、長門裕之、小沢昭一、東野英治郎、千田是也、渡辺文雄ほか

【STORY】蝶の幼虫が日本を縦断する過程でさまざまな人間模様と遭遇する。息をのむ映像美が絶賛された伝説の作品。岩波映画をとび出した「青の会」メンバーが総協力し、松川八洲雄の原案を黒木和雄が映画化。シナリオが撮影に間に合わず、岩佐寿弥は現場でも旅館にカンズメになり、セリフ作りに呻吟していたことはいまでも語り草になっている。

7/6(土)15:00
7/19(金)20:30



『ねじ式映画 私は女優?』

(1969年/100分/35mm/パートカラー/シネマ・ネサンス)

主演:吉田日出子 出演:清水紘治、佐藤 信ほか

【STORY】撮影は1968年、政治の季節。東に行けば三里塚闘争があり、西に行けば水俣問題があった。映画仲間の小川紳介は三里塚へ、土本典昭は水俣へ向かったが、岩佐寿弥は映画をつくる行為そのものを「闘争の現場」にしようとした。撮られる側「主演の吉田日出子と彼女を取り巻く男優」と撮る側「岩佐寿弥」がカメラの前後で闘争する。と同時に映画と観客がスクリーンを介して闘争する。果たして真実はどこにあるのか?

7/7(日)20:30
7/22(月)20:30



『叛軍No.4』

(1972年/98分/16mm/白黒/「叛軍」製作集団)

撮影:堀田泰寛 出演:和田 周、最首 悟

【STORY】「No.4」というからには「No.1〜3」がある。「叛軍」シリーズは、当初は反戦自衛官小西誠の裁判経過を収めたアジビラ映画(シネ・トラクト)だった。当然「No.4」も記録映像だと信じる観客を、岩佐寿弥はこの4番目の作品で見事に裏切る。映画は戦時中に反乱罪を問われた元二等兵の講演からはじまるのだが……。反戦兵士を英雄の座から転落させる、その仕掛けはほんとうに恐ろしい。ホラー・ドキュメンタリ−と言ってもいいかもしれない。

7/6(土)20:30
7/14(日)20:30
7/23(火)20:30
7/26(金)15:00



『眠れ蜜』

(1976年/100分/16mm/パートカラー/シネマ・ネサンス)

脚本:佐々木幹郎 撮影:田村正毅 出演:長谷川泰子、吉行和子、根岸とし江(季衣)、石橋蓮司、岸部シロー、和田 周

【STORY】詩人・佐々木幹郎がシナリオを書いた本作で、岩佐寿弥はフィクションとドキュメンタリ−という映画の既成概念を解体した。全3部に別れたオムニバス映画を、「若」「熟」「老」、3つの世代に属する3人の“女優”がそれぞれ「自分自身」という役柄で演じる。中原中也、小林秀雄らとの恋を遍歴した「老」の世代の主役・長谷川泰子の存在感はすごい。女の一生はドラマであり、そのドラマこそが実人生であることがわかる。

7/13(土)20:30
7/25(木)20:30



『京都幻想』

(1985年/51分/ビデオ/カラー/東芝EMI)
企画・構成・脚色:なかにし礼 演奏:東京弦楽合奏団
出演:大場久美子、夏木マリ、范 文雀、吉行和子


『奈良幻想』

(1987年/41分/ビデオ/カラー/東芝EMI)

企画・構成・脚色:なかにし礼 撮影:津村和比古 演奏:読売日本交響楽団 出演:名取裕子、麿赤兒、大駱駝艦

【STORY】なかにし礼と岩佐寿弥が組んだ音楽幻想シリーズの代表作2本。解説を一切排し、音楽と風景を感覚的に映像化した環境映像の先駆けとなる実験的作品である。京都では春夏秋冬を4人の女優が競演。奈良では東大寺の“お水取り”にストラヴィンスキー作曲『春の祭典』をぶつけ、石舞台古墳で麿赤兒と大駱駝艦の白塗り男が踊る。奈良の撮影は津村和比古(『オロ』撮影)。

7/8(月)20:30
7/16(火)20:30



『プチト・アナコ 〜ロダンが愛した旅芸人花子〜』

(1995年/50分/ハイビジョン/カラー)

撮影:田村正毅 脚本:加藤一郎 出演:古川あんず、麿赤兒

【STORY】今世紀のはじめに、数奇な運命をたどったある女優の生涯を事実にもとづいて構成した作品。その女優は、ロダンのモデルになった唯一の日本人である花子。彼女は森鴎外の小説『花子』もモデルでもある。冒頭で描かれる小説『花子』を原作とした白黒サイレント短編映画で、まず心が和む。物語は晩年の花子が麿赤兒演ずる高村光太郎に、ロダンとの思い出を語る形で進行する。この辺りの岩佐演出は心憎い。1995年度ハイビジョンフェスティバルドラマ部門大賞受賞作品。

7/9(火)20:30
7/17(水)20:30



『いっちょんわからんやろ 〜変身の魔術師・麗子クルック〜』

(1996年/55分/ハイビジョン/カラー)

撮影:津村和比古 朗読:岸田今日子 ナレーター:石橋蓮司 出演:麗子クルック

【STORY】舞台はパリ16区。ヴェルナー・ヘルツォーク監督の『ノスフェラトゥ』(1979)やクロード・ルルーシュ監督の『愛と哀しみのボレロ』(1981)の俳優たちを映画のなかで変身=メタモルフォーゼさせた魔術師と呼ばれる女性、麗子クルックの心の原点と技の到達点をクロスさせて描いた作品。目玉のようなおたまじゃくしの卵が、おたまじゃくしへ、そしてカエルへと変身していく様をじっと見つめていた少女は、どのように変身の魔術師になったのか…。撮影は津村和比古(『オロ』撮影)。

7/11(木)20:30
7/24(水)20:30



『モゥモ チェンガ』

(2002年/104分/ビデオ/カラー/自由工房)

撮影:田宮健彦 音楽監督:高橋悠治 語り:吉行和子 製作:工藤 充

【STORY】「モゥモ チェンガ」=「満月ばあちゃん」と呼ばれるチベット難民のおばあちゃんは、祖国への望郷を抱きながら、異国ネパールで40年を越える月日を過ごしてきた。朝に、昼に、夜に祈る。そんな日々のなか、ある日ダライ・ラマ法王に謁見する機会が巡ってくる。彼女は法王に向かい、これまで口にしたことのなかったほんとうの心配事を打明ける。岩佐寿弥のチベット・ドキュメンタリ−第一作。

7/12(金)20:30
7/21(日)15:00



『チベット2002 〜ダラムサラより〜』

(2002年/68分/ビデオ/カラー/自由工房)

撮影:田宮健彦 音楽:高橋悠治 語り:范 文雀、和田 周 製作:工藤 充

【STORY】なぜダライ・ラマ14世はインドにいるのか? なぜチベット人は命をかけて亡命しつづけるのか? なぜ彼らは故郷チベットに帰れないのか? チベットの受難の歴史をひも解くドキュメンタリ−。後半の岩佐寿弥監督によるダライ・ラマ法王へのインタビューでは、さまざまな質問に当意即妙の答えで応ずる法王の魅力を存分に楽しめる。岩佐寿弥の「チベットへの想い」を映像化した作品。

7/15(月)20:30

【スペシャルトーク&ライブ】
7/21(日)18:15の回『オロ』上映後 
スペシャルライブ&トーク

出演:大友良英(音楽)、下田昌克(似顔絵)、津村和比古(撮影)、代島治彦(編集)

【トークゲスト】
7/6(土) 15:00の回『とべない沈黙』上映後 岡田秀則(映画研究者)
20:30の回『叛軍No.4』上映後 松江哲明(映画監督)
7/7(日)20:30の回『ねじ式映画 私は女優?』上映後 金子遊(映像作家・批評家)※金子さんによる、岩佐監督の特別インタビュー映像上映あり
7/9(火) 20:30の回『プチト・アナコ』上映後 南 椌椌(アーティスト)
7/11(木) 20:30の回『いっちょんわからんやろ』上映後 津村和比古(カメラマン/上映作品を撮影)
7/13(土) 20:30の回『眠れ蜜』上映後 福崎星良(映画監督)
7/14(日) 20:30の回『叛軍No.4』上映後 和田周(俳優・声優/上映作品に主演)
7/16(火) 20:30の回『京都幻想+奈良幻想』上映後 麿 赤兒(舞踏家・俳優/上映作品に出演)
7/19(金) 20:30の回『とべない沈黙』上映後 金子遊(映像作家・批評家)※金子さんによる、岩佐監督の特別インタビュー映像上映あり
7/23(火) 20:30の回『叛軍No.4』上映後 堀田泰寛(カメラマン/上映作品を撮影)
7/25(木) 20:30の回『眠れ蜜』上映後 吉行和子(女優/上映作品に出演)
7/26(金) 15:00の回『叛軍No.4』上映後 和田周(俳優・声優/上映作品に主演)※ゲストに予定しておりました最首悟さんが体調不良のため、ゲストが和田周さん(俳優・声優/上映作品に主演)に変更となりました。最首さんより預かった原稿を代読いたします。急な変更になりましたことをお詫び申し上げます。

岩佐寿弥

 Iwasa Hisaya


◆1934年奈良県生まれ。映像作家・TVディレクター。1959年岩波映画入社。岩波映画時代の任意の運動体「青の会」メンバーでもあった。黒木和雄、土本典昭らと共に、1964年フリーランスになる。
代表作は映画作品『ねじ式映画−私は女優?−』(1969年)『叛軍No.4』(1972年)『眠れ蜜』(1976年)『モゥモ チェンガ』(2002年)『チベット2002』(2002年)、音楽紀行作品『京都幻想』(1985年)『奈良幻想』(1987年)、海外取材によるTV作品『プチト・アナコ−ロダンが愛した旅芸人花子−』(1995年)『いっちょんわからんやろ—変身の魔術師・麗子クルックの世界』(1996年)など。
◆2005年、戦争中に出会った初恋の先生と60年後に交わした往復書簡集『あの夏、少年はいた』(川口汐子共著)を出版。この本を原作としたドキュメンタリードラマ『あの夏〜60年目の恋文〜』(NHK)が2006年放映される。
2012年、チベットの少年を主人公にした映画『オロ』を公開。第7回UNHCR(国連高等難民弁務官事務所)難民映画祭招待作品に選ばれ、2012年度日本撮影監督協会賞を受賞するなど、映画界の注目を浴びる。2013年5月3日『オロ』東北初の自主上映会で講演後、宿泊先の階段から落下。頭部を強打し、脳内出血で翌日5月4日に死亡。享年78歳。最後まで現役で活躍、『オロ』が遺作となる。
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