【見逃した映画特集2016】『あやつり糸の世界』

2017/1/5(木)、6(金)

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(C)1973 WDR (C)2010 Rainer Werner Fassbinder Foundation der restaurierten Fassung
日時
2017/1/5(木)、6(金)
料金
※2部入替制 一般・学生・シニア 1,000/UPLINK会員 900 ※特別興行の為パスポート会員使用不可、サービスデー適応外
作品分数
212分
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ファスビンダー meets サイエンス・フィクション

ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダ―監督によるSF映画の傑作



70年代初頭に西ドイツで作られた、幻のSF映画

37年の生涯に40本を超える映像作品を遺したライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。 彼が手がけたジャンルは、フィルム・ノワール、西部劇、メロドラマ、歴史劇、文芸映画、ドキュメンタリー風ドラマ、社会問題映画、連続テレビドラマ、テレビショー、舞台劇の映像化などその幅は驚くほど広い。 しかもどの作品にもファスビンダー独自のテーマとスタイルを強烈に刻印している。

そんなファスビンダーが発表した唯一のSF映画が『あやつり糸の世界』である。 ゴダールの『アルファヴィル』(1965)、トリュフォーの『華氏451』(1966)、キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968)、タルコフスキーの『惑星ソラリス』(1972)といった作家主義的SF映画の系譜に連なる作品として『あやつり糸の世界』が位置づけられる。 だがテレビ映画として16㎜フィルムで撮影された『あやつり糸の世界』は劇場用35㎜プリントも作成されず、数度テレビ放映されただけだった。 またファスビンダー自身も本作についてほとんど語らなかったため重要作と見なされることもなく、結局彼の膨大なフィルモグラフィーの中で埋もれた一本となった。 その意味で今回のデジタルニューマスター版が作成されたことにより『あやつり糸の世界』は初めて劇場公開されることになる。

【story】
嘘だと、言ってくれ。


サイバネティック未来予測研究所ではスーパーコンピューター<シミュラクロン1>がフォルマー教授によって開発されていた。それは電子空間に仮構の人工的世界を作り上げ、それを元に政治・経済・社会についての厳密な未来予測を行なうことができた。この人工的世界には人間そっくりの個体が生活していた。ただ上部世界との連絡個体だけはこの世界が単なる仮想現実であることを知っていた。

ある日、<シミュラクロン1>の開発者フォルマー教授が謎めいた状況で死んでいるのが発見され、公的には自殺と説明された。フォルマーは死の直前に研究所の同僚ラウゼに対して重大な発見をしたと伝えていた。研究所のワンマン所長ジスキンスはフォルマーの後任にフレッド・シュティラーを任命する。だがジスキンスのパーティー会場で保安課長ラウゼがシュティラーを呼び止めてフォルマーの最期の様子を伝えようとした次の瞬間、ラウゼは忽然と姿を消してしまう。シュティラーはラウゼ失踪を警察に届け、捜査を依頼するが何の手がかりも得られない。それどころかラウゼの存在は皆の記憶から消えてしまい、研究所の所員データベースにもラウゼの名前はなかった。死んだフォルマーの娘エヴァも自分の叔父に当たるはずのラウゼのことを知らないと告げる。シュティラーの見たものは幻だったのだろうか……。


『マトリックス』より26年も早い!
「ヴァーチャル世界」を描いた画期的作品!

コンピューター制御による世界というテーマは後の『マトリックス』を先取りするものだが、ダニエル・F・ガロイの原作小説『模造世界』に忠実に従ったこの映画化は現実とヴァーチャル世界の関係性についてずっと先鋭化された構造を提示している。

実はこれは世界と人間の本質についてずっと哲学的に探求された主題でもある。 すなわち我々が現実だと思っている世界が実は上位の世界によってあやつられた仮構の現実に過ぎないのではないかという思考であり、それは管理された世界からの解放への希望を人々に呼び覚ます。

それは『トゥルーマン・ショー』(1998)のようにテレビショーの演出された現実からの離脱であり、『ブレードランナー』(1982)のように人間とレプリカントの違いが次第に意味を失ってゆく世界に歩み出す行為として、幾度も映画の中で展開されてきた。 だがファスビンダーの描き出すメタ世界は巨大な仕掛けを必要としない。

ファスビンダーにとってどの世界も全て荒野であり、人と人の関係はいつも絶望に満ちていながらどこか希望の光を宿している。 おそらく『あやつり糸の世界』最大の仕掛けは、我々がヴァーチャルリアリティーという舞台装置によって空想世界を体験しているはずが、そこに他ならぬ現実の我々の姿を発見してしまうことにある。 それは終わることのない悪夢から醒める悪夢の連鎖によく似ている。



あやつり糸の世界(1973年/西ドイツ/第1部105分 第2部107分/16mm/デジタル/原題: Welt Am Draht)
監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
出演:クラウス・レーヴィチュ、カール=ハインツ・フォスゲラウ、アドリアン・ホーフェンほか
配給:アイ・ヴィー・シー
(C)1973 WDR (C)2010 Rainer Werner Fassbinder Foundation der restaurierten Fassung


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