【見逃した映画特集2016】『オーバー・フェンス』

上映終了

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©2016「オーバー・フェンス」製作委員会
日時
上映終了
料金
一般¥1,300/学生・シニア¥1,100/UPLINK会員¥1,000 ※特別興行の為パスポート会員使用不可、サービスデー適応外
作品分数
112分
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オダギリジョー×蒼井優×松田翔太×山下敦弘監督

邦画界を支える豪華スタッフ・キャスト陣が圧倒的な力で紡ぎだした純粋で不器用な者たちの、愛しくも狂おしい青春


2010年、熊切和嘉監督『海炭市叙景』、2014年、呉美保監督『そこのみにて光輝く』。そして2016年、山下敦弘監督『オーバー・フェンス』。
没後四半世紀を迎え、ますます再評価が高まる孤高の作家佐藤泰志の小説を現代日本を代表する気鋭たちが映画化するシリーズが、いよいよ最終章を迎える

その生涯において五度も芥川賞にノミネートされながら受賞することなく逝った佐藤。「オーバー・フェンス」は彼にとって最後の芥川賞候補作となった作品で、作家活動に挫折しかけた時代に職業訓練校に通っていた自身の体験を基にした物語だ。

熊切監督、呉監督とは、大阪芸大の先輩、同期という間柄の山下監督。佐藤の故郷、函館で撮影されたこの三部作はいずれも近藤龍人が撮影を担当しているが、山下監督と近藤は、山下監督の劇場デビュー作『どんてん生活』からコラボをつづけている。そう、山下監督がシリーズを締めくくるのは言わば必然とも言うべき「合流」なのだ。

結婚生活が破綻。妻子と離れ、職業訓練校に通う孤独な男。年代の異なる個性豊かな「生徒たち」と「学校生活」を送る彼が、ひとりの女と出逢う。自由と苦悶のはざまでもがく女の一途な魂にふれることで、男の鬱屈した心象は徐々に変化していく。それでもままらない時間を過ごすしかない一組の男女に、映画は最後の最後に、すこやかな奇跡を授ける。その、かつてないほど爽やかな幕切れは、前2作にはなかった余韻であり、最終章にふさわしいエンディングでもある。

山下監督は「その瞬間を生きている人間たちの映画にしたい」と撮影前に記したが、まさに本作は、過酷な状況下で、それでも何かを求めずにはいられない「わたしたち」の一瞬一瞬にシンクロする。特定の時や場所を超え、普遍的な情感がすっと降り立つ、その映画的幸福。映画監督、山下敦弘の熟成と新境地が類稀なる邂逅を果たした傑作だ。

脚本を手がけたのは『そこのみにて光輝く』に続いての登板となる高田亮。「オーバー・フェンス」の他、佐藤の短編「黄金の服」からヒロインに鳥好きという映画オリジナルの設定を施し、鳥の求愛ダンスという忘れがたいシーンを作り上げた。音楽も『そこのみにて光輝く』を手がけた田中拓人。傷ついた人々の情景に、軽やかに染み込むメロディを紡ぎ、観る者に寄り添う。

主人公、白岩の頑な心が徐々にほどけていく様を、細密にして豊かな演技で見せるのはオダギリジョー。強烈なキャラクターのヒロイン、聡(さとし)の暴発する純情と伸びやかなイノセンスを等価のものとして体現したのは蒼井優。『蟲師』での初共演から9年。互いにキャリアを重ね、日本映画を担う演じ手となったふたりの、満を持しての競演は、期待をはるかに超える成果をスクリーンに刻みつけている。白岩と聡を引き合わせるミステリアスな男、代島の屈折した想いをイマジネイティヴな芝居で伝えるのは松田翔太。また、職業訓練校の多彩な面々に、北村有起哉、満島真之介、松澤匠、鈴木常吉ら芸達者なキャスト陣。そして、白岩のかつての妻に優香が扮し、ドラマに奥行きを与えている。

【story】
誰もがその場所から飛び立てるのを信じてた


白岩義男(オダギリジョー)は妻子と別れ、勤めていた建設会社も辞めて故郷の函館に帰ってきた。実家に顔も出さず、職業訓練校に通いわずかな手当で、気ままに孤独な生活をずるずると続けていた。
職業訓練校には元ヤクザで家族を養う男、人とうまくかかわれない鬱屈とした若者、老後の楽しみで通う老人といった個性豊かな「生徒たち」がおり、白岩は深く関わることはせずある程度の距離をとりながら「学校生活」を送っていた。
いつものようにコンビニで夕食を買い終えた白岩は店の外で、傍らの中年男に鳥の求愛ポーズをしている不思議な女性(蒼井優)に目を奪われる。その女性もまた、白岩の瞳をまっすぐ捉えた。





オーバーフェンス(2016/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/DCP5.1ch/112分)
監督:山下敦弘
出演:オダギリジョー、蒼井 優、松田翔太ほか
配給:東京テアトル
©2016「オーバー・フェンス」製作委員会


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