About Director

映画『バレエ・ボーイズ』

監督/脚本
ケネス・エルヴェバック

1966年10月11日、ヘムネスベルゲツト生まれ。ノルウェーのドキュメンタリー映画監督でありプロデューサー。オスロ大学、ノルウェー経営大学、オスロ映画テレビアカデミー卒業。ノルウェー放送協会(NRK)のラジオ及びテレビ部門で5年働く。

受賞したドキュメンタリー作品は、"TheSecretClub"(NRK)、"Hullabaloo"(TV2、SVT)。ヴァラエティ誌は"TheSecretClub"を“心温まる作品。巧みなストーリーテリング”と評した。"Hullabaloo"は、ノルウェー・テレビ賞(Gullruten賞)を受賞している。

その他の監督作品は"APositiveLife"(NRK、YLE)、"Cabin Dreams"(TV2)、Kings(NRK)。IndieFilmでは、"300Seconds"では、エピソードの1つを監督している。

Director's Note

各地のオペラハウスで、たくさんの子供たちがバレエを踊っている。そういう子供たちに興味を持った。彼らはたいてい10代になる前にバレエをやめてしまう。ヨーロッパの多くの国でそのような状況なのだ。オスロで出会った少年ダンサーたちは、親友同士であり、同じ学校にも通っていた。将来はプロのバレエダンサーになりたいという共通の夢を持つ彼らは、しかし、それぞれ異なる困難に直面する。

2006年、私はオスロのゲイのハンドボール・チームについてのテレビシリーズ、"Hullabaloo"を撮った。私が面白いと思ったのは、コートに出た少年たちが、“典型的なクイア”からアグレッシブなスポーツ少年に変貌するところだった。バレエに打ち込む少年たちも似たような偏見にさらされている。ビールが大好きなサッカーのサポーターたちは、バレエを女性的だと考え、女性やゲイがやるものだと思っているが、真実はそうではない。

プロのバレエダンサーになるのがどんなに大変か示す映画を撮りたいと私は思った。バレエはジェンダーや性指向とは関係がない。バレエとはすなわち、才能と厳しいトレーニングであり、友達や家族に支えられながら自分の表現やアイデンティティを見つけようとする悪戦苦闘なのだ。

少年たちの物語を作品化するにあたり、カメラを観察者として活用すると同時に、美しいバレエの映像も撮るようにした。少年たちは、ある時は撮影者と話し合い、ある時は互いにおしゃべりをする。私はニコラ・フィリベールとマーガレット・オリンのドキュメンタリーに触発されてきた。オリンもフィリベールも、“子供あるいは若者として何かを経験すること”の核心にまっすぐに迫っていく。そういうアプローチによって、私もいろいろな課題に直面する少年たちの心に肉薄できた。メインの3人を近くから撮る時は小さなカメラのほうが都合がよかったが、スタジオでバレエを撮る時はカメラマンを使うほうが好ましかった。ハイスピードカメラの活用により、実験的な映像も取り入れながら美しいダンス・シーケンスを実現することもできた。ダンサーたちの動きが加速する直前に、一瞬制止させると面白い映像になる。編集はデンマークのクリストファー・ヘイエ、撮影はノルウェーのカメラマン、トシュタイン・ノドランドで、彼らとの仕事はとても楽しかった。

この作品を、おとぎ話だと想像してみるのが私は好きだ。ルーカス、シーヴェルト、トルゲールの夢は本当に叶うに違いない。