ストーリー

僕たちは三人だった 彼、彼女、そして僕

"ミスター・タンブリンマン" ─ 自分の詩をインターネットに投稿し続ける少年のハンドルネームである。少年は、都会に住むチャットの相手から、三日後に行われるボブ・ディランのライブに誘われる。だが、少年は「ここからじゃ遠すぎる」と躊躇してしまう。少年が住むのはブラジルの南部にある、ドイツ移民の伝統が今も強く残る小さな田舎町なのだ。

ある日少年はひとりの青年と出会う。彼はかつて、恋人のジングル・ジャングルと一緒に自殺を図った男ジュリアンだった。ジングル・ジャングルは死に、ジュリアンは死に切れず、町に戻って来たのだ。

インターネット上には、ジングル・ジャングルが生前に撮影した映像が残されていた。彼女は、数多くの作品を撮影し、インターネット上に投稿していたのだ。少年はその映像の世界に惹きこまれていく。現実世界と仮想世界の境界が曖昧になる程に。

─ ボブ・ディランのライブに行くことを願い、この退屈な町を出たいと思う少年
─ 自分の魂、自分のかけらを写真や映像に残し、逝ってしまった少女
─ 恋人との情死に失敗し、死に切れず、結局この町に戻ってきてしまった青年

死んだジングル・ジャングルへの自己同一視、ジュリアンのいわれなき魅力。少年は自分自身の解決しがたい絶望と格闘する。

少年は、ボブ・ディランのライブに行く決心をする。ライブに行ったとしても、その先には何もない。そう分かっていても。その時、ジュリアンが現れる。まるで、少年を町から連れ出す案内役であるかのように。過去の自分を見つめるかのようにジュリアンは言う。
「君を見ていた。…ドライブするか?」
少年はジュリアンについていこうと決める。かつてジングル・ジャングルがそうしたように、町から出ていく新しい道を見つけるために。

しかし少年は、ジュリアンと一緒に町を出ることはしなかった。
ふたたび、橋に立つ少年。しばらく川を見つめ、ついに橋を渡り始める。
何が起ころうともいつもと変わらず流れ続ける川音だけが、鳴り響く…