エピソード2
ミュージシャン・アハマドのメッセージ
撮影場所: 無名戦士公園 避難民キャンプ
ストーリー
アハマド・アブ=アムシャはミュージシャンであり、5人の子どもを育てる父親でもある。かつてはコンサート活動を通じて生計を立てていた。
彼はガザ北部のベイトハヌーンに住んでいたが、戦争の勃発以降、これまでに12回もの避難を余儀なくされた。現在はガザ西部にある「無名戦士公園」内のキャンプで暮らしている。2025年1月、停戦が発表された際にベイトハヌーンへ帰還したものの、自宅もスタジオも瓦礫と化していた。それでも、比較的形を保っていた部屋にテントを張り、留まることを選んだ。
しかし、2025年3月に停戦が再び崩壊すると、彼はアル・レマル地区へと移動し、現在もそこで生活している。
アハマドは、スマートフォンで見るニュースや周囲の人々からの情報を頼りに、日々、現状や知人の安否を確認している。神に祈ることでしか心を保てない、不安に満ちた日々が続く。
そんな避難生活の中で、アハマドは「音楽でこの不安を吹き飛ばせないか」と考えるようになった。彼はかつて共にエドワード・サイード音楽院で働いていた仲間の音楽家たちと協力し、子どもたちに楽器や歌を教える活動を始めた。
戦争への恐怖で笑顔を失った子どもたちが、音楽を通して再び笑う姿を見る瞬間が、アハマドにとって何よりの支えとなっている。戦争のことを忘れられる、ほんの一瞬の時間――それが、彼が活動を続ける理由だ。
アハマドは信じている。音楽は戦争への抵抗であり、世界に声を届ける最も強い手段だと。そして、世界中の芸術家たちにこう呼びかける。
「不正義に沈黙することは、加担することだ。」今の彼の目標は、できるだけ多くの子どもたちに音楽の喜びを届けること。パレスチナへの希望を失うことなく、アハマドは今日も音楽を奏で続けている。
登場人物
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アハマド・アブ=アムシャ
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末息子:ザイン
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義兄弟:バーシル
撮影場所
アハマドは、ガザ西部にある無名戦士公園内のキャンプで暮らしている。
「無名戦士の広場」にあった公園は、娯楽や憩いの場として市民に親しまれていた。
かつてこの広場の中央には大きな兵士の像が立ち、広々とした緑地に囲まれていた。
現在はその場所に、何十ものテントが張られている。
掲示板型SNSのredditでは、公園のかつての姿と比較をする動画が投稿されている。




