90's[ゴールデン・イヤーズ]

トム・ダウドがレコーディング業界に入って50年目の1996年、ジョン・コルトレーンのボックス・セットでその年のグラミー賞にノミネートされた。また、オールマン・ブラザーズ・バンドがベスト・アコースティック・ロック・パフォーマンスでグラミー賞を獲った、ライブレコーディングも制作した。

この受賞は、90年代に見事なカムバックを果たしたオールマン・ブラザーズ・バンドの絶頂期だった。90年の成功作『セブン・ターンズ』に始まり、91年の『シェイズ・オブ・テュー・ワールズ』、92年のライブ・レコーディング『イブニング・ウィズ・オールマン・ブラザーズ』、そして94年の傑作『ホエア・イット・オール・ビギンズ』と、トム・ダウドとオールマン・ブラザーズ・バンドは制作を続けた。オールマン・ブラザーズ・バンドはダウドとの長きにわたる友人関係の下に、ロックとブルースとジャズとが自在に融合した彼らの音楽を打ち出し、この10年で新たなファンを獲得していった。

スタジオではトムは相変わらず他のアーティストたちとも忙しく、その多様性が彼の90年代の評判のひとつとなった。例えば、プライマル・スクリーム(『ギブ・アウト・バット・ドント・ギブ・アップ』)や、ポッパ・チャビィ(『ブーティ・アンド・ビースト』)、ティンズリー・エリスなどとのコラボレーションのように、あらゆる年代やジャンルのアーティストたちのレコーディングを形にしていった。

半世紀もの間、サウンドを捕らえるためのテクノロジーへの貢献と創造に重要な役割を果たしてきたダウドは、まさに歴史の生き証人であり、歩くテクニカル・マニュアルだった。エネルギッシュでやさしい彼は、その知識を可能な限り人々に分け与えるべく、学校での講演も行った。またレコーディング業界でのキャリアを年代順に細かく書き表わした。そしてそれは本ドキュメンタリー・プロジェクトの始まりともなった。

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